好きな服を着ることは自分自身を表現することだと思います。この先もますますとんがって、これからの私がどんなふうに変わっていくのか楽しみでなりません。新しい服に袖を通すたびに未知の自分に出会える――そんな希望が胸いっぱいに膨らんでいます。

10年後になりたい自分を
イメージして服を買おう

「10年後になりたい自分をイメージして、新しい服を買いましょう」

『着る学校』の生徒さんたちには、繰り返しそうお伝えしています。なぜならば、どんな服を着るのかは、その人の生き方そのものだと、私は思っているからです。新しい服を買う前に、まずはこれからの自分はどんな人生を歩んでいきたいのか、10年後にはどんな自分になっているのが理想なのか――目標をきちんと定めてこそ、自分らしいおしゃれが楽しめるのだと思います。

 10年というのは目安ですが、服以外のものでも、10年後まで大切にできているかどうか、というのは私のなかのひとつの基準です。素敵なお店を紹介されたときには「おいしいけど、10年後も通うかな」と考える。大好きなお菓子はとらやの羊羹やウエストのシュークリームで、時間を超えて長く愛されるものに価値を感じます。だからこそ、服を選ぶときにも「10年」が大事な基準になるのです。

書影『Life Closet』(扶桑社)『Life Closet』(扶桑社)
西ゆり子 著

 ちなみに、私の10年後は80代。自分はどんな80代になっていたいのかを考えるに、服やおしゃれに関する仕事はずっと続けていきたい。いくら年齢を重ねても、やっぱり「着ること」が好きなので、生涯、好きなことにまい進していく生き方が私には合っているのだと思います。とはいえ今よりはゆったり仕事をしたり、着ることがラクな服を選んだほうが体は心地いいだろうから…シルクでできたカットワークのレースのブラウスに、ゆるめのタイトスカート、そこに帽子といったコーディネートが似合いそう。背筋がシャンと伸びるジャケットや、ウエスト切り替えのベーシックなワンピースもワードローブに加えて、仕事も日々の生活も、ひとつひとつ丁寧にたおやかに過ごせるように。そんな10年後の自分を想像すると、またワクワクしてきます。

「あんな80代になれたら素敵よね」

 そんなふうに言ってもらえたら本望です。10年後の私が、今よりもっと自由におしゃれを楽しんでいることを願いつつ、服と共に歩んでいく人生はまだまだ続いていきそうです。