山口 ただ、内国ファイナンスをしているということは、インフレ政策にしても預金封鎖にしても、調整であることには変わりはないわけですよね。
松本 ある意味で言えば一緒です。それでもインフレという方法が最も痛みが少なく、かつ、高齢者から若い世代への富の移転につながり、リスクを取る人に対してのご褒美にもなります。インフレという手段でいまの問題を解決するのが、資産税をかけたり税金を上げるよりも、未来に向かうという目的に適っているのではないでしょうか。
いまはインフレという「流れ」に乗るべきとき
ただし、その流れもいつかは終わりを迎える
山口 内国ファイナンスをしなければならない状況のいま、問題解決のための手段はいろいろあると思います。もちろん調整もありますし、富裕層に税金をかける、相続税を100%課税にする、インフレにする、などですね。
僕が問題だと感じているのは、それぞれの政策が誰にとってどのような意味合いがあるかという明確なメッセージを発していないことです。たとえばインフレにしても、継続的な価値を生まない「眠っている預金」が市場に流れる効果はあっても、高齢者にとっては資産の目減りが起こります。ひとつの政策は、それぞれの立場によって意味が変わってくると思うのです。その点で、僕は健全なコミュニケーションが行われていないと感じています。昨年の選挙で自民党を支持した層がどのような人々であったか明確には把握していませんが、資産を預金で持っている年配の方が多かったのではないでしょうか。その方々がこの政策に納得されていることが、僕は不思議でならないのです。
松本 でも、インフレ政策を支持しなければ「徳政令」が出るかもしれませんし、年金のリスケジュールが起こるかもしれません。そう考えると、インフレが最もスムースな方法ではないでしょうか。しかも「この政策はあなたがたにとってマイナスになりますよ」と宣言する政策ほど愚かなものはないと思いますし、実際にマイナスになるかどうかはまだわかりません。繰り返しになりますが、放っておいたらハードランディング(財政破綻)してしまうかもしれない。
山口 たしかにそうですね。