松本 もうひとつ言うと、祖父から孫へ資産を譲るような究極のコミュニケーションができれば、日本人は富を移転すると思うんですよ。ところが、そうした究極のコミュニケーションは実際は難しく、世代間抗争のようになってしまう。だとしたら中途半端なメッセージを発するより、良い面をアピールして実践していくのが最良の策だと思いますよ。その証拠に、日本経済にとって良いことが行われているという雰囲気が広がり円安になって、日本は競争力が高まったじゃないですか。これは悪いことだという雰囲気になると円高に戻り、競争力を失うわけですよ。なぜマゾヒスティックになる必要があるのでしょうか。

山口 なるほど。

松本 阿波踊りの歌の出だしに「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らな損々」というのがありますよね。それに掛けると、いまは「見るとき」ではなく「踊るとき」だと思うんです。

 ただし人間のやることですから、アベノミクスを進めていくといつかバブルが起こり、それが弾けたりする。でもそれは、すでにお話ししたように「波」なので不可避です。人間は少しずつ賢くなっているので、そうしたマイナスの波が来たときに、前よりは穏健にうまく対処する知恵を身につけているはずです。今は上がろうとしている局面なので、マイナスを怖れず流れに乗ったほうがいいと思います。それでも、流れには必ず終わりがやって来ます。そのときは降りなければいけないので、だからこそ流れの本質を見極めなければなりません。今回の流れの本質はインフレなので、デフレ論が復活し始めたら要注意です。

自分が納得できるサービスを完成させてから辞めたい

山口 松本さんがイメージされている、マネックス証券、マネックスグループの目指すところをお聞かせいただいてもよろしいでしょうか。

松本 僕はいつの日か引退したとき、どこかの海辺でワインでも飲みながら、一日中トレーディングをやりたいんです。そのときに、当然マネックスを使いたいので、世界中のマーケットで売買ができて、的確な情報が提供され、ポートフォリオ管理ツールがあるなど、これが最高というサービスをつくりたいと思っているんですよ、辞めるまでに。

山口 趣味と実益を兼ねておられる(笑)。

松本 自分は使いたくないけどみなさん使ってくださいね、というサービスなんておかしいですよね。