「おためし」でコーチが家にやってきた!ど緊張だけど世界激変!

 読者ご自身との比較対象になるように、筆者の運転に関するスキルと、車歴、免許歴も簡単に紹介しよう。

 筆者は、父親だけが運転をする車を所有している家庭に育った。いわゆるワンボックスカーの安価なものが常に1台家にあり、家族旅行やスキーなどの時に使っていたので、「車生活」には幸せな記憶がある。

 未成年の頃から「車を運転すること」には憧れがあり、運転免許は高校卒業前に近所の教習所に通って、特に問題なく取得。運転というものは楽しかったが、上達するほどまで乗る機会もなく、都心暮らしに必要ないので、そのままペーパードライバーになった。

 現在、40代半ばに手が届く世代として、20〜30代を思い返すと、「男女が両方いれば、運転をするのは男性」というような社会的な暗黙の了解が、まだあった頃だったようにも思う。そんな風潮も、無意識に自分の車購入や運転スキルを向上させることになんらかの影響を与えたような気がする。

 運転講習に話を戻そう。

 まずは、サービスや、講師との相性を知るためにも「90分」のおためしコースを受講した。どの会社もこうした「おためしプラン」を用意しているところが多かった。

 自宅への運転コーチ派遣型ということで、多少の心配をしていたものの、前夜、当日に携帯にきちんとした連絡がきて、講師の方と問題なく待ち合わせることができ、ご挨拶。笑顔が素敵で話しやすい女性のコーチに安堵した。

 初回はマイカーではなく、教習車を使った。教習車には補助ブレーキや、講師の座る助手席から見える位置に設置してあるミラーがあるため、マイカーよりも教習車の方が安心だからだ。車には初心者マークと共に、「講習中ですので、追い抜いてください」という分かりやすいマークも貼ってある。旅先の地方でレンタカーを借りて、ただの一本道などをすこし運転したことはあったものの、東京の中心の運転なんぞ、何年振り…というよりも人生で初めてに近い体験だった。アクセルを踏むだけで緊張をするような状態だったが、比較的交通ルールが難しくないという湾岸エリアへ。

 この初回のことを今思い出しても、迷惑をかけずに前に進むことくらいしか頭になく、道路の文字は目に入らず、カーナビの音が頭に入ってこない。久しぶりの運転というのが、いかに怖くて、特殊な緊張状態に陥るのかということを感じた。同時に、いつも暮らしていた東京に膨大な数の交通標識があるのに、これまでは目に入っていなかったことに驚いた。普段の環境を、全く別視点で見つめなおす不思議体験だった。人間というのは本当に普段は見たいものしか見てないのだな、と運転とはまた別の示唆まで得てしまった。

 都心の運転は怖い。これは、頻繁に運転をしている人でも同じだという。担当してくれたコーチによると自動車教習所を出ただけでは、都心を運転できるようにならないと思った方がいいと言う。つまり、路上でのマイカー教習は、私のようなペーパードライバーのためだけにあるのではなく、教習所という基礎トレーニングを終えたあとの、実践としても有効なのかもしれない。

 そんな緊張もともなう初回おためし教習であったが、非常に楽しくもあった。

 大人になって、刺激的なことはそう滅多にないという人であっても、もし10年以上の運転ブランクがあるとすれば、この90分はしっかりとした刺激体験になると思う。例えるなら、海外生活に慣れすぎている私にとっては、ドバイに行くよりワクワクしたといっても過言ではなかった。

 普段は、基本的に電車での移動で近所の土地を捉えているが、車だとこんなふうに移動ができるのかと、新鮮だった。時々タクシーを使うのとは全く違う感覚だ。車に乗り慣れている人には笑われてしまいそうな感想だが、引越しなしに世界が広がる感覚を持てた。