部下が残業しているとき、二流は「頑張れ」と言う。じゃあ一流は何と言う?
そう語るのは、これまで4000社以上の導入実績がある組織コンサルタントである株式会社識学の代表取締役社長・安藤広大氏だ。「会社員人生が変わった」「もう誰も言ってくれないことがここに書いてある」と話題の著書『リーダーの仮面』では、メンバーの模範として働きつつ、部下の育成や業務管理などで悩むリーダーたちに「判断軸」を授けている。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、注目のマネジメントスキルを解説する。(構成/種岡 健)

部下が残業しているとき、二流は「頑張れ」と言う。じゃあ一流は何と言う?Photo: Adobe Stock

「勘違い」を生むな

 会社組織での弊害として有名なのが、「残業アピール」です。

「遅くまで残って働いている部下を褒める」ということにより、その問題は起こります。

 定時で仕事を終えて結果を出している部下と、残業してようやく結果を出している部下。
 同じ結果だとするならば、評価されるべきなのは、当然、前者のほうです

 しかし、後者の部下を「よく頑張っているな」と、ついリーダーは褒めたくなってしまうでしょう。
 ここで、プロセスを無視する「リーダーの仮面」が大事になってきます。

 もし残業する姿を見て、「よく頑張っているな」と声をかけたとします。
 すると、部下はどのように考えるでしょうか。

「上司がいるときは残業したほうが有利だ」
「結果が出なくても、『遅くまで頑張っている』と言えばいいんだ」

 そのような思考になります。
 リーダーが残業を評価している気がなくても、ちょっとした言動によって「評価されている」と部下に思わせてしまうことになり、認識のズレが生じます

 二流の管理職やリーダーは、つい気軽に「頑張れ」と言う。しかし、一流はそれをせず、評価しないようにするのです。

「労働時間」を減らそう

 これは、ある部長の話です。
 彼も当初はプロセスを重視したマネジメントをしていました。
 営業部門ではモチベーションを上げることを大事にし、クリエイティブ部門でもプロセスを管理する状態でした。
 その結果、部全体で管理する工程が増え、全体の労働時間も減らず、チームがどんどん疲弊していったと言います。
 そこで、プロセスへの介入は一切やめて、結果だけを管理するようにしました

 営業部門は、訪問数と提案数の結果だけを確認。
 クリエイティブ部門も、途中経過を見ず、それぞれのクリエイターの等級に合わせて報告と指導の回数を設定しました。
 そうすることで、労働時間を減らしながらも自らで回せる仕事が増え、部署全体の働き方が改善されていったそうです。

 これまで部下のプロセスを褒めてきた人が、それをやめるのは葛藤があるかもしれません。
 しかし、仮面をかぶり、実践してみてください。任せてみてください
 そうすることで、部下の成長スピードを実感するでしょう。

(本稿は、『リーダーの仮面』より一部を抜粋・編集したものです)

安藤広大(あんどう・こうだい)
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモ、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)を経て、ジェイコム株式会社にて取締役営業副本部長を歴任。2013年、「識学」という考え方に出会い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2024年4月現在、約4000社の導入実績がある。主な著書に『リーダーの仮面』『数値化の鬼』『とにかく仕組み化』のシリーズ(いずれもダイヤモンド社)がある。