「とっさの質問にうまく答えられない」「『で、結局、何が言いたいの?』と言われる」「話し方やプレゼンの本を読んでも上達しない」……。そんな悩みを持つ方は、言語化の3要素である「語彙力」「具体化力」「伝達力」どれかが欠けていると指摘するのは、文章や話し方の専門家であり言語化のプロである山口拓朗氏。本連載では、山口氏による話題の書籍「『うまく言葉にできない』がなくなる言語化大全」の中から、知っているだけで「言語化」が見違えるほど上達するコツをご紹介していきます。

3800人以上を取材したインタビューのプロが、質問する時に気をつけていること・ベスト1Photo: Adobe Stock

相手が理解しやすい「言葉」を使う

 たとえば、小学生相手に、東大の教授がふだん通りの授業を行なったとしたら、まったく伝わらないでしょう。知識レベルが異なるからです。このように、相手にきちんと伝えるためには、相手の知識レベルに合わせることが鉄則です。基本ラインは「中学生でもわかるレベル」。難しい言葉はオプションとしてストックしておき、いざという時に使えるようにしておきましょう。

相手のバックボーンを考慮する

 私には1歳の孫がいます。その子に話しかけるときは、「ブーブーが通ったねぇ」と幼児語を使います。でも、仕事相手の方に「ブーブー」なんて言ったら、「この人、大丈夫かな」と思われてしまうでしょう。

 また、たとえば、日本語が苦手そうな外国人のコンビニ店員さんに話しかけるときであれば、簡単な単語を使って、シンプルな文章で、わかりやすく話すようにしています。

 このように、同じ意味のことを伝える時でも、相手によって「伝わる言葉」は異なりますし、適切な伝え方も変わってきます。
相手が子どもや外国人の方なら、みなさん自然とできていると思います。でも、ビジネスシーンではそこまで意識していないのではないでしょうか。

インタビュー相手の職種に合わせて言葉を選ぶ

 私が雑誌記者をしていたころは、様々な職種の方にインタビューをしていました。今振り返ってみるとその頃、「相手に合わせて言葉を選ぶ」という意識が高まったように思います。

 たとえば、外資系コンサルや、経営者の方にインタビューする場合は、カタカナ語をあえて使っていました。
「プライオリティーが高いのはどれですか」という具合です。その方たちの日常会話によく出てくるような単語を使うと、伝わりやすく、相手も話が通じるインタビュアーだと思ってくれます。

 一方、カタカナ語に慣れていない下町の工場長にお話を伺う場合は、カタカナ語が通じないリスクもありますし、逆に「何だこいつは。意識高めで嫌なヤツ」と思われる可能性もあります。そういう時はスイッチを切り替えて、違う種類の言葉を使います。
「優先順位はどれが一番ですか?」「もうかってますか」「景気いいっすね」という感じです。

 このように、相手のバックボーンに応じて使う言葉を選んでいくことが大事です。

 なお、相手のバックボーンがはっきりしない時や、大人数に向かって話す時などは「中学生でもわかる言葉を使う」ことをおすすめします。
中学生と話す時のことを想像してみてください。おそらく「この言葉で伝わるかな?」「この順番でわかるかな?」と考え、丁寧に噛み砕いて話すはずです。その結果、知識が乏しい人や読解力が低い人のことを置き去りにすることがなくなります。中学生に理解してもらおうという意識は伝える力の向上にも一役買います。

 *本記事は、山口拓朗著「『うまく言葉にできない』がなくなる言語化大全」から、抜粋・編集してまとめたものです。