カタリーナ 「そうね、例えば夫婦どちらかの会社で子どもを扶養している社員に『家族手当』などを支給している場合、そういう制度がある方で扶養した方がいいかもしれないわね。あとは付加給付が充実している健康保険組合に夫婦いずれかが加入していれば、加入している方が扶養した方が恩恵を受けられるわね。協会けんぽには付加給付※がないから」

※付加給付…医療保険には、医療費が一定額を超えた場合に超えた分の医療費を払う「高額療養費制度」などがあるが、さらに上乗せして給付してくれるのが「付加給付」。付加給付があるかどうかは、健康保険組合によって異なる。

鈴木 「なるほど。ちなみに、扶養する人は保険料が増えるんでしたっけ?」

カタリーナ 「いいえ。被用者保険では本人の報酬で決まるから、何人扶養していても健康保険料は同じよ」

鈴木 「それはよかった。じゃあ、妻の方で娘の扶養手続きをお願いしないといけないですね。もしかしたら、家族手当が付くかもしれないな」

<カタリーナ先生からのワンポイント・アドバイス>
●厚生労働省の通知「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について(令和3年4月30日保保発0430第2号)」において、夫婦とも被用者保険の場合、以下の通り明確化された。
・被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、被保険者の年間収入(過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだものとする)が多い方の被扶養者とする。
・夫婦双方の年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内である場合は、被扶養者の地位の安定を図るため、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。
・夫婦の双方又はいずれか一方が共済組合の組合員であって、その者に被扶養者とすべき者に係る扶養手当又はこれに相当する手当の支給が認定されている場合には、その認定を受けている者の被扶養者として差し支えない。なお、扶養手当等の支給が認定されていないことのみを理由に被扶養者として認定しないことはできない。

●夫婦の一方が国民健康保険に加入している場合、被用者保険の被保険者については年間収入を、国民健康保険の被保険者については直近の年間所得で見込んだ年間収入を比較し、いずれか多い方を主として生計を維持する者とする。なお、国民健康保険は世帯の人数で保険料が変わってくる。

●被保険者である主として生計を維持する者が育児休業を取得した場合、育児休業により収入が減ったとしても特例的に被扶養者を異動しないことになっている。ただし、新たに誕生した子どもについては、認定手続きを改めて行う必要がある。

●夫婦の年間収入の逆転等により子を扶養から削除する場合は、年間収入が多くなった方の保険者が扶養認定することを確認してから削除することとされている。

※本稿は一般企業にみられる相談事例を基にしたフィクションです。法律に基づく判断などについては、個々のケースによるため、各労働局など公的機関や専門家にご相談のうえ対応ください。

(社会保険労務士 佐佐木由美子)