子ども写真はイメージです Photo:PIXTA

平均よりも著しく高い知能を持つというギフテッド。実は「頭がいい」と言われる彼らへの教育に、注目が集まっているという。VUCAの時代に我々が鍛えるべき知性とはなにか。※本稿は、毛内拡『「頭がいい」とはどういうことか――脳科学から考える』(ちくま新書、筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。

知能指数だけではない
ギフテッドの共通の性質とは

 一般的に、ギフテッドはIQが130以上であることが多いと言われています。そのスコアは、抽象的な概念や複雑な問題を理解し、解決する能力が優れていることと相関があります。新しい情報や技術を迅速に学ぶことができ、短期間で高いレベルのスキルを習得できるということで、社会で重宝される人となり得ます。

 それにプラスして、好奇心が強く、学問や芸術を問わずいろいろなことに興味を持ち、知識を追求し続ける姿勢もあるという尊敬すべきメンタリティがあります。高い集中力を発揮し、長時間にわたって研究や作業に没頭できるのです。さらに、感受性が強く、感情表現も豊かであることが多く、芸術や音楽などの分野で才能を発揮したりもします。

 したがって、知能指数だけでは測れない、創造性、リーダーシップ、運動、芸術など、さまざまな分野で顕著な才能を持っている人々と言えるでしょう。

 歴史上、今で言うギフテッドな人たちはたくさんいました。いやむしろ、ギフテッドな人たちが歴史を動かしてきたと言うことができるかもしれません。彼らに共通しているのは、独自の視点を持ち、他人とは異なるアプローチで問題を解決したり、新しい発見や革新的なアイディアを生み出したりすることが得意な点です。

 だからこそ、自分の意見や価値観を持ち、他人に左右されずに自分の道を進むことができるのかもしれません。

 世の中には、ギフテッドの子供たちがその才能を最大限に発揮できるようにサポートするための特別な教育プログラムがあります。個別指導、年齢に応じた学習内容よりも早いペースで学ぶ早修教育(アクセラレーション)、学習内容を深く広く学ぶ拡充教育(エンリッチメント)などが有名です。ギフテッド教育は、子供たちが持つ才能や潜在能力を十分に引き出すことを目的としています。

 文科省が2023年度から、ギフテッドの子供たちを支援する事業を始めると発表したことが各種メディアでも取り上げられ、話題を呼びました(以下、太字は文部科学省「「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実」より「児童生徒の発達の支援」から引用)。

 米国等においては「ギフテッド教育」として、古典的には知能指数(IQ)の高さなどを基準に領域非依存的な才能を伸長する教育が考えられてきましたが、近年ではこれに加え、領域依存的な才能を伸長する教育や、特異な才能と学習困難とを併せ持つ児童生徒に対する教育も含めて考える方向に変化しています。