外国人観光客からすれば、「おもてなし精神」をこんなにアピールするということは、日本はタイなどのような高いホスピタリティの「観光大国」だと思うし、それなりに観光客のワガママも通るはずだと勘違いしてしまう。だから、全国の観光地で好き放題やってしまう。

 しかし、現実の日本はまだ「観光大国」にはほど遠い。外国人観光客がここまで増えたのもほんの最近だし、ホスピタリティも高くない。多言語対応も十分ではないし、何よりもオーバーツーリズム対策に必要不可欠な「ゾーニング」(観光客の流れを戦略的に分散をさせること)もできていない。だから、トラブルが雪だるま式に増えていくのだ。

 そして、事態をさらに悪化させているのが「安いニッポン」だ。多くの外国人にとって、日本は自国と比べものにならないほど安いカネで遊べる。これが「ハメを外す」ことを助長させるのだ。

外国人にハメを外させた
「安い日本」の自業自得

 それを誰よりもよくわかっているのが、実は我々日本人だ。

 かつて日本が経済大国だった時代、多くの日本人観光客が、自国と比べものにならないほど安いカネで遊べる東南アジアに旅行をして、ハメが外しまくった。経済が衰退して「ハメを外される側」になっただけの話だ。

 いずれにせよ、今の外国人観光客の迷惑トラブルが増えているのは、「自業自得」の側面もある。

 自分たちで勝手に「我々は世界一のサービス精神があります」とハードルを上げたせいで、それを間に受けてハメを外したい外国人たちが、大挙して押し寄せているのだ。

 この状況を変えたいのなら、まずは「おもてなしは日本文化」などという嘘を引っ込めるべきだろう。外国人観光客が異国でハメを外したいのなら、それに見合うだけのサービスを提供してカネをきっちり請求する。そこでルールを破ったり、住民や地域に迷惑をかけるような行為をした外国人は、法律に基づいて厳しく処罰もしていく。

 本当に観光立国を目指すのならば、我々日本人は「おもてなし精神」とやらを誇りに思っていないことを明確にすべきだ。サービス精神などではなく、あくまでビジネスとして外国人観光客をもてなしているということを、この際、世界にしっかりと示すべきではないか。

(ノンフィクションライター 窪田順生)

なぜ日本は外国人観光客にナメられるのか?「おもてなしは文化」というウソの自業自得