人は思った以上に
「非言語」で欲求を発信している

 すでに、非言語表現には言語表現以上の情報量があることがわかりました。

 実際、私たちは普段から、何も言葉を発していない相手に「もしかしてお腹空いてる?」とか「何か嫌なことがあったの?」などと確認することがあります。

 また、小さな子どもが何も言っていない母親に対して「ママ、何を怒ってるの?」と表情や態度を見ただけで尋ねるなど、子どもでさえ非言語表現を受け取ることができています。

 つまり、自分も相手も、非言語表現によって感情や考えが表に漏れ出していることを自覚しなければなりません。

 では、特にどんな非言語に人の欲求は表れるのでしょうか。それは、次に説明する「目、眉、口」です。

最も人の気持ちが表れるのが
「目、眉、口」

 人の感情が、非言語表現として最も顕著に表れるのは目と眉、そして口です。

 アメリカの心理学者ポール・エクマン(1934〜)の研究で基本的感情が特定の部分に表れ、強調されることがわかっています。その研究成果はアメリカの教育の場や、犯罪学、心理療法などでも取り入れられています。

 アメリカの学生はその中で最もわかりやすい「目、眉、口」をビッグスリーと呼んで「見方」を勉強します。これら3つに共通する見方として、部位が上がっているのか下がっているのかを捉えることが簡単な方法だと言われています。

●まずは目、眉、口を見る

 目、眉、口で見るべきは、「上がっているか下がっているか」です。

 たとえば、目尻が下がっているとうれしいとか楽しい、口角が下がっていると悲しいとか困っている、眉頭がさがっていると怒っている、など、絶対ではありませんが、ざっくりと変化を確認することができます。

 これらの特徴を利用したのが顔絵文字です。

 顔絵文字は日本とアメリカでは少し異なります。日本では目の形を強調した表現が笑っていることを表しています。一方、アメリカは口を強調した表現で笑顔を示します。

 日本人は目の微妙な変化から相手の感情を察しようとします。アメリカ人は多人種でコミュニケーションをするため、発音などをしっかり読み取ろうとリップリーディングが定着しているように、口の状態から言葉や感情を読み取ろうとします。

子ども「何かあったの?」→親「何でもない」と答えてはいけない!コミュ力を磨く親が言うべき一言とは『アメリカの中高生が学んでいる話し方の授業』(SBクリエイティブ)小林音子 著

 どちらも目だけや口だけを見ているのではなく、部位のどちらをより重視しているかの違いがあるだけで目も口も両方見ています。ですから、口が笑っていても目が笑っていないと「なんか怖いな」と感じたりするときがあるように、1カ所のみではなく総合的に判断しているのです。

 アメリカではもちろん目を見て話すことも大切だと教えられますが、もっと大切なことは「目の使い方」だと習います。まさにビッグスリーの観察です。特にどこを見て話していいのかわからない人にはぜひ身に付けてほしいスキルです。

 子どもの頃から非言語表現の観察ができている子どもは、親のことをとてもよく観察できています。だからこそ親の真意を見抜いてしまうのです。

 この素晴らしい非言語能力を受容する力を「なんでもない」「そんなことない」と否定せずに伸ばすことは、将来のコミュニケーション能力の基礎となり、リーダーシップや交渉やプレゼンテーションスキルへと進化していきます。