ちなみに2020年代現在、1世帯あたりの書籍購入金額はいまだに右肩下がりである(2022年の書籍の購入金額は7738円)。80年代から2000年代に至るまで、男性の平日の余暇が減る(黒田、「日本人の余暇時間」)と同時に、書籍の購入金額も減っている。1世帯あたり書籍に費やすお金は、70年代末期がピークだったと言えよう。

 ならばなぜ、80年代にこんなにもミリオンセラーが登場していたのか。

 それは単に、人口増の恩恵だった。

 そもそも人口が増えれば、書籍を買う人の母数が増える。テレビの影響もあり、「売れる本」がつくられる。そして一部の本は売れる。だが一方で、70年代と比較すると、たしかに「書籍離れ」ははじまっていたのだ。