くだらない社内政治で、現場は疲弊している
1つめは、DXやデジタルテクノロジーが、企業の競争力そのものであるという幻想を多くの人が抱いていたことです。
事業が縦割りであることが原則の日本企業では、それぞれの事業特性に合わせてデジタルやITツールを特殊化させがちです。そうすることで、事業そのものの競争力も増すと考えられているのですが、これはハッキリと間違いです。
皆さんのなかにも当事者がいるかもしれませんが、このスタイルでDXを進めていくと、上から降ってくる無茶な依頼に対応すべく、現場のエンジニアやプログラマーがどんどん潰れていってしまいます。しかも、どんなに優秀な人財でもです。
このような考えのもと、日本企業が導入したデジタルやITツールは特殊設計になり、特殊な能力を備えた人間しか使いこなせない非常に複雑なシステムになってしまいます。
これに対して、世界のDX先進企業では、DXはあくまで、経営や事業にとって道具であり、経営や事業の構想力は事業に携わる人間が生み出すものと考えられています。そのため、デジタルやITツールは、できるだけ標準的で、誰もが簡単に使いこなせるものを積極的に導入しています。
その結果、デジタル・ITツールの普及や低コストの実現、企業オペレーションへの貢献が顕著になっているのです。加えて、エンジニアやプログラマーは「いかに誰でも使えるシステムにするか」に集中できるため、クリエイティビティを存分に発揮することができます。
現状の日本企業がDXで成果を出すのが難しいもうひとつの理由は、データの活用についてです。DXで成果を上げるためには、最初に経営や事業判断に応じて膨大なデータを収集し、いつでも活用できる体制をつくらなければなりません。
しかし、この体制を整えることは日本企業が不得意としている部分です。事業縦割りの文化が強い日本では、ヒト、モノ、カネ、そして情報やデータまでもが、事業縦割りで管理されているため、それらを全社で統合して共有し、利用するという、DXの成果を上げるために最も必要な基本的な思想が普及していません。
結果として、事業部ごとにデータを特殊なかたちで管理する「事業部ごとのDXプロジェクト」が乱立することになります。
ここでも、各事業ごとのDXをつなぐのは、現場のエンジニアやプログラマーです。社内のシステムなのにもかかわらず、まるで社外システムと連携するかのような膨大な量の業務が彼ら彼女らにのしかかります。言うまでもなく健全ではありません。
DXで重要なデジタルの3つの特性は、
1 迅速性
2 汎用性
3 相乗効果
です。
しかし、事業部縦割りが強い日本の伝統企業では、そもそも、このデジタルの3つの特性が、活用しにくくなっているのです。