「このまま」今の仕事を続けても大丈夫なのか? あるいは「副業」をしたほうがいいのか? それとも「起業」か、「転職」をすべきなのか? このように感じたとしたら、それは皆さんの考えが正しい。なぜなら、今感じているお金に対する不安は、現実のものとして近づいているからです。無収入となる65歳から70歳、もしくは75歳までの空白期間を、自己責任で穴埋めしなければならなくなる未来が、相次ぐ法改正でほぼ確定しました。
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ホンモノの資産家はリスク資産を買わない理由Photo: Adobe Stock

マネーリテラシーが低い人ほどハイリスクを好む

「資産○○」の○○には何が入ると思いますか?

 日本人であれば、ほとんどの人は「資産運用」を思い浮かべたと思います。これに対して金融先進国イギリスの人は、「資産保全」を思い浮かべます(*1)

 資産とは、運用するものではなく保全するものだということ。そして、マネーリテラシーが低い人ほど、少ない資産を運用して楽して増やそうと考えて、リスクの高い金融商品に手を出してしまいます。その究極が宝くじなどのギャンブルです。

銀行にとって都合の悪い事実が判明

 私は半沢直樹と同じバブル期に財閥系の銀行に就職し、50歳で独立するまでの30年近くを金融業界のど真ん中で働いてきました。法人融資が専門でしたが、営業店の内部管理責任者や営業推進責任者も経験し、本部の企画部門や営業推進部門にも在籍していたのです。そのときに浮かび上がってきたのが、銀行にとって極めて都合の悪い事実でした。都合が悪い事実とは、資産家の大半は、もっぱら国債や定期預金で資産保全をしていたということ。投資信託を買っていたのは資産が少ない顧客ばかりでした。資産家の大多数は、投資信託や株・FXなどで資産形成したわけではなかったのです。マネーリテラシーが高い人ほどリスク資産を買わないという事実は、銀行にとって都合が悪いことこのうえない。当時の私は銀行員でしたので、大人の事情で誰にも言えませんでした。

運用だけで資産形成できるほど、世の中は甘くない

 そもそも資産運用だけで資産形成できた人は、一部の天才か、火事場泥棒か、運のいい人くらいなものです。ウォーレン・バフェットのように先見の明がある人が一部の天才の一例です。火事場泥棒の典型例が、通貨危機を意図的に演出したジョージ・ソロスでしょうか。それくらい難易度が高いので、お金のプロといわれる銀行員で、資産運用だけで資産形成できた人を、私は見たことがありませんでした。

 このように、資産運用だけで資産形成することは、お金のプロにとっても難しい。それゆえ、公的年金の財源の大半は保険料と税金とで賄われています。つまり、誰かが働いて稼いだお金から捻出されているということ。資産運用だけでお金を増やすことは至難の技なのです。

資産家は3パターンのいずれかで資産形成してきた

 では、資産家はどうやって資産形成してきたのでしょうか?

 再現性ある手法に限定するならば、大きく分けて3つしかありません。士師業や自営業のように手に職を持つか、大家のような投資家になるか、事業を立ち上げて起業家になるか。ロバート・キヨサキ氏が唱えたキャッシュフロー・クワドラントの全4象限中の3つがこれにあたります。残った1つが従業員、つまりサラリーマンですが、大企業の役員にでもならない限り、サラリーマンが資産家になるのは難しいでしょう。

 とはいえ、原則には例外がつきものです。サラリーマンであっても、資産家になれる再現性ある方法が1つだけあります。それは、サラリーマンとしての本業以外に2つ目の稼ぎ口を見つける方法です。2つ目の稼ぎ口を上記3つのいずれかにできれば、それを足がかりにして、資産家を目指す道が拓けます。

 あくまでも私の見立てですが、お偉いさんの大半は、組織内政治に長けていたから出世できたにすぎません。業務遂行スキルという視点では、出世していないサラリーマンのほうが圧倒的に優秀に思えます。それに、日本のサラリーマンは世界一優秀ですので、3つのうちの1つくらいには適性があるでしょう。

 その際、就業規則や人事院規則に違反しない手法であればスマートですし、節税ができれば一石二鳥です。一例をあげると、稼ぎ口二刀流や妻社長メソッドなどがそれです。家族の協力を得られる人は妻社長メソッド、そうでない人には稼ぎ口二刀流が順当です。

*1 『お金のプロに聞いてみた! どうしたら定年までに3000万円貯まりますか?』(P38) 

**本記事は、『40代からは「稼ぎ口」を2つにしなさい 年収アップと自由が手に入る働き方』著者による書き下ろしです。