適当な相手に巡り会えない
社会になったワケ

 山田氏は、結婚したくない人が増えたというよりも、結婚に適した相手に出会いにくい社会になったことで、結果的に結婚しない選択肢を取る女性が増えていると話す。

 では、昔に比べて結婚に適した相手に出会いにくくなっているのは、なぜなのだろうか。

「お見合い結婚が主流だった数十年前は、大半の人が結婚できる時代だったので、当時は結婚できないという悩み自体がほとんどありませんでした。出会いの機会も限られているため、身近な人が素敵に見えやすかったこともあります。しかし、今の時代は、マッチングアプリなどで出会いの機会は豊富になったことに伴い、比較対象も増えています。その結果、次はもっといい人に出会えるかもしれないと思う人が増え、それにより『妥協してまで結婚したくない』という女性が増えたのだと思います」

 結婚するかしないかは個人の自由であるはずだが、いまだに日本社会には古くからの価値観が残っており、若い女性が周囲から無用なプレッシャーを受けている。

「より正確に表現するならば、日本社会は『きちんとした相手と結婚する』ことへのプレッシャーが強い社会だと言えます。だから、例えば非正規雇用の男性と結婚しようとすれば、『そんな相手とは結婚するな』というマイナスの意味でのプレッシャーを周囲から与えられることにもなります。しかし、男性間の所得格差が広がっており、世間で言う『結婚に適した男性』の数自体が減っていることも事実としてあります。それゆえに、結婚しにくい社会になっているのではないでしょうか」

 2022年の就業構造基本調査によると、正規雇用の男性の所得を比較した場合、既婚男性の25~29歳と55~59歳では、年収中央値が424万円から667万円へと約1.6倍増になっている。これに対し、未婚男性は、同366万円から458万円へと約1.2倍増にとどまっている(*2)。「結婚できないのは非正規雇用で年収が伸びないから」と考えられがちだが、実際はそうではないのだ。

(*2)総務省統計局「令和4年就業構造基本調査」
https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/pdf/kall.pdf

 一方で、女性が結婚相手に求める年収は500万円以上(*3)。これでは、女性たちが求める「結婚に適した男性」は、物理的に少ないということになる。

(*3)LIMO 女性が男性に求める理想年収は「500万円以上」
https://limo.media/articles/photo/55195