すると、「歴史的敗北」からチームを立て直したにもかかわらず、黒田監督の強気な発言は、ネット上で更なる批判を呼んでしまった。「『我々が正義』ということは、『対戦相手は悪』と言いたいのか?」などと勘繰られる事態になり、他チームへのリスペクトに欠けるとしてバッシングが集中。SNS上で「炎上」状態になった。

町田は「時間稼ぎ」をやりすぎ!?
昨季からくすぶっていた「炎上」の火種

 その引き金となった要因は、実は他にもある。少し時計の針を戻すと、町田のサッカーが物議を醸したのは、実は今回が初めてではない。J2を戦った昨シーズンも、対戦チームの監督から「時間を分断する行為が非常に多い」「接触プレーのたびに、もうプレーできない、と思うくらいに痛がり、直後に立ち上がって普通に走り出している」と苦言を呈された。

 これを契機として、町田のサッカーに対する賛否両論が飛び交ったこともあった。青森山田時代に重用した十八番で、プロの世界にも持ち込んだロングスロー(※)を繰り出すたびに、相手チームのファン・サポーターからブーイングを浴びる状況も生まれた。当時の黒田監督はこんな言葉を介して反論している。

「ルール上でダメというわけでもない以上は、我々の武器として使っていく。相手にクレームをつけられる理由もないので、そこはぶれずにやっていく。いろいろと言う方はいますけど、いちいち答える必要もないと思っている」

「我々は勝利至上主義だとよく言われますけど、勝利至上主義と勝利にこだわる姿勢、細部にこだわる姿勢は全然違う。その部分での言葉使いや言葉選びのところでちょっと誤解されているところがあるのかもしれませんが、これからも町田のサッカーでしっかり勝利を追求していきたい」

※ロングスロー戦法の詳細は、筆者が昨年に執筆した『「プロでは通じないはず」の奇策でJ2クラブが躍進、元・青森山田の名将の手腕』を参照。

 こうした背景がある中で、黒田監督は「我々が正義」という強い言葉を使ったのだ。そして筆者の私見では、黒田監督はそうした言葉をスポーツの世界で使うべきではなかった。

 じゃんけんでは「後出しをしてでも勝ちたい」と漏らすほど、黒田監督は負けず嫌いを自負している。従来はそれがプラスに作用し、町田をJ2から飛躍させてきた。だが今回の炎上は、指揮官のそうした性格がマイナスに作用したといえる。

 本件による炎上がきっかけで、選手たちが心身に不調をきたし、町田の強みがスポイルされて(=台無しになって)しまっては元も子もない。黒田監督は筑波大関係者やサポーター、サッカーファンの気持ちを逆なでするような発言を控えるべきだったと言えるだろう。