地方のタクシー不足は
インフラの欠陥だ

 このような地方の現状を打破していこうとする企業がある。たとえば、徳島県に本社を置く電脳交通(https://cybertransporters.com/)を挙げることができる。

「弊社は徳島という地方都市で営業していますが、住民はタクシー不足に対し、半ば諦めている状況です。この状態はインフラの欠陥だと思います。とはいえ何も手を打たないと、地方のタクシー会社は廃れていくしかありません」(代表取締役・近藤洋祐さん、以下同)

 近藤氏が、タクシー業界改善のために立ち上げたのが、タクシー配車システム「DS」である。どんなシステムなのか詳しく説明してもらった。

「タクシー配車システムDSは、全国にあるタクシー会社が受電した依頼を、オペレーターが使用するパソコン上のシステムで処理し、迅速に対応するサービスです。配車オペレーターは、内容を確認し、パソコン上の地図を見て、最も近い車両に迎車指示を出します。こうすると、お客様を待たせる時間が大幅に短縮され、失注も減ります。その結果、1台あたりの稼働時間が増え、輸送能力の向上につながるわけです」

 このシステム、現在、全国約500のタクシー会社が導入しており、約2万台の車両に実装されている。

深刻化するタクシー不足の救世主?約2万台が導入する「意外な最新技術」とは「タクシー配車システムDS」を搭載した車両。ドライバーはネット経由で届く情報をもとに稼働する

「導入したタクシー会社からの感想で多いのは『これまで無線などの古い体制で運用していたが、タクシー配車システムを導入し、大幅にミスが減った』という内容です。無線では他のお客様の情報が耳に入ってしまいますし、個人情報保護の観点からも、最新技術に任せた方が得策だと思います」

 じつは、近藤氏自身もタクシードライバーを5年間経験している。2009年、祖父が徳島で営んでいた吉野川タクシーに入社したが、当時、業績は悪化の一途をたどっていた。2012年に代表取締役に就任した際には、債務超過寸前に陥っていたほどだ。

 日々の業務を通してタクシー業界のデジタル化の遅れを痛感した近藤氏。タクシー業界のDX化を進めるために、2015年、電脳交通を創業したのである。

 現在は売り上げの7割を、この配車システムが占めており、年200%成長という盛況ぶりだ。