「朝礼では毎回、会長がつくった謎のフィロソフィーを独唱させられる」「女性は職場でメガネ禁止」「上司より先に退社してはいけない」「忘年会・新年会の幹事と隠し芸は若手の登竜門」などなど、みなさんの会社や業界にも、謎ルールや時代錯誤な慣習が一つや二つはあるはずだ。

 実はこの「職場の謎ルール」が増えたのは、「異常なほどルールに厳しい」という日本人の気質のせいでもある。ルールをしっかり守る人は「ルール」と聞くと思考停止状態でそれに従い、否定することができないからだ。

 そういう同調圧力がある組織は、新入社員が入るとわかる。もし新人が「あの朝礼で叫んでいるの、仕事になんか意味あんですか?」とか「上司がいても、仕事が終わったらさっさと帰った方が疲れも取れてパフォーマンス上がるんじゃないですか?」と職場の謎ルールにダメ出しをしたらどうだろう。

世界トップレベルで
「ルール破り」を許せない文化

「なるほど、いいこと言うね」と謎ルールが撤廃される企業もあるかもしれないが、ほとんどの会社はこの新人に「社会人失格」「協調性ゼロ」「面倒くさいヤツ」といった烙印を押してしまうのではないか。

 先ほどの「職場における仕事観・倫理観に関する国際比較調査」でも明らかになったように、日本人は世界トップレベルで「ルール違反」を許容できない民族だ。だから、どんな理不尽な謎ルールであっても、それを守らない者は許せない。どんなに有能であろうとも、どんなにビジネスの効率性向上に貢献しようとも、組織には「不要」と判断されるのが日本企業なのだ。

 このカルチャーを象徴するのが、日本のサラリーマンを揶揄する「社畜」という言葉だ。日本のビジネスシーンは、どんな理不尽でも、どんな不合理でも「組織のルールに大人しく従う者」こそが「正義」なのだ。

 こんなコチコチに硬直した「ルールに縛られた組織」に「ビジネスの効率性」があるわけがない。「企業の機敏性」が67カ国中最下位となってしまうのは、実は日本企業の多くが「自分たちでつくったルールで自縄自縛になっている」という感じで、自由を奪われていることが大きいのだ。