実際、今回の掲示板を見て「こんなことに税金が使われるのはうんざりだ」と感じた人は多いであろう。しかし、インターネットやSNSで情報収集をする層が増加しているとはいえ、選挙公報や掲示板に馴染みのある人もいることを考えると、すぐに廃止する方向へ議論が傾く可能性は低いように思われる。

「あのポスター見た?」
選挙の話のきっかけになる皮肉

 今回のような選挙ポスターの使い方は個人的にはまったく支持しない。ただ、悲しいかな、この件で初めて選挙について友人や家族と会話を交わしたという話を何度か耳にした。

 たとえば40代の友人は成人したばかりの子どもから「選挙ポスター見た?」と聞かれたそうである。また、ある20代は、ニュースでも報道された選挙ポスター掲示板の様子が親からLINEで送られてきたという。

「あのポスターを見たか」「こういうポスターをどう思うか」という会話がそこかしこで行われたことは想像に難くない。

 投票率が低く、選挙への関心が低いと言われる国民性であり、政治の話はとかく煙たがられがちである。投票へ行くのは支持政党がある人と思われがちな社会の中で、こんなことをきっかけに「選挙の話」が交わされる機会が増えたのであれば、それは喜ぶべきことなのか、憐れむべきなのか……。

 実際に投票率が上がるかどうかはわからないが、主要候補に関してさまざまな報道が出ていることもあり、今回の都知事選は例年に増して注目度が高い雰囲気がある。そして、もしも仮に投票率が上がったとしたら、ほんのわずかかもしれないが、このポスター騒動が関係しているかもしれない。