目標達成のため
伝え方をつねに工夫する

私はその人と親しくさせてもらったのですが、実務能力が高いだけでなく、目標実現に向けて周囲をやる気にさせ、組織に一体感をもたせて推進することが本当に上手でした。

食事をしながら雑談を交えつつ、本音の話を聞いてみると、じつは周囲に対して不安や不満など、思うところはいろいろとありました。

しかし、そうした思いをそのまま伝えても、自分の目的を達成するためにはマイナスであることを把握しており、周囲への伝え方をつねに工夫していたのです。

一流のリーダーは
「相手も正しい」とリスペクト

それはまさに、リーダーを演じている役者そのものでした。「自分が正しい」という立ち位置から伝えることと、「相手も正しい」とリスペクトの念を抱きながら伝えるのとでは、同じ内容でも結果がまったく違ってくることが多いです。

前者は相手の心証を害するうえに、目標の実現を自ら遠ざけてしまいがちです。後者は相手を味方につけて目標の実現を近づけます。どちらを選択するべきなのかは、火を見るよりも明らかでしょう。

西郷も島流しから戻ってからは、自分の感情を他人にストレートにぶつけず、本心は心の奥深くにしまいながら、倒幕・明治維新に向けた偉業を進めていきます。島流し以降の西郷は、倒幕という目標実現に向け、演じていたのです。

社長や上司に対して意見するときのポイント
1. 自分の発言で相手との関係が悪化したとき、自分に問題がないか振り返る
2. 発言する前に「目標実現に向けて必要な発言なのか」を一度考える
3. 目標の実現に向けて演じる意識を持つ

※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。