「社会をよくする投資」とは、社会そのものに新たな価値が生まれるお金の流れを意味する。経済成長を主目的とした社会ではなく、「人」の困りごとや、経済成長を追い求めるなかで生じた社会の歪みを解決することで新たな経済領域を生む。つまり経済ファーストではなく人ファーストであり、その結果として、社会全体の経済価値が高まるということだ。それは、同時に社会の変化を起点にした経済価値の創出でもあり、投資家の利益(リターン)の源泉ともなる。

 リターンとはその名のとおり、社会に貢献する結果として「戻ってくるもの」であり、つながりのある「お金の循環」がもたらすものだ。

 モノが不足している時代には、暮らしを便利にするモノを充足させることが会社の役割だった。しかし、モノが充足したいまの社会においては、社会課題を解決し、社会をよりよくするお金の流れのなかにこそ、新たな経済価値が生まれる。そこに収益機会は間違いなく存在する。収益機会とは、社会や人の心に埋もれた潜在的なニーズに応えること、つまり収益を生む新たなビジネス領域の発見に他ならないのだ。

 社会課題の解決とは、新たな社会への転換であり、新たな経済領域である。身近な例でいえば、オンラインツールによりどこでも働けるようになると、人と会社との関係、地方と都市との関係が変わる。車や住まい、服などのシェアリングエコノミーは、人と人、人とモノとの関係や、所有と共有の概念を変える。

 年を追うごとに身近に感じるようになった異常気象や自然災害、高齢化や少子化、食の安心・安全や廃棄ロス、経済格差、教育を取り巻く環境など、日本も世界もさまざまな課題に直面している。こうした社会課題、すなわち社会の困りごとを解決することは、いわば潜在的な社会ニーズの掘り起こしに他ならない。

 会社が単にモノやサービスを増やし、規模の経済を追い求めて成長する時代は過去のものだ。社会課題から自社の存在目的や社会のニーズを掘り起こし、新たな事業を創出したり、モノやサービスに新たな意味づけを行ったりすることができれば、売上、利益を伸ばすことにつながる。そうすれば、会社の価値は高まり、株価も上がり、投資したお金は増えて投資家の手元にもどってくる。