「ザイアンス効果」とは?
「一理ある」と思ってしまう怖さ

 私たちの認知能力が恐ろしいのは、そこから先である。

 私たちは当該人物の話を何度も聞いている中で、そこにも一定の理があることを見いだしてしまう。私たちは、何度も接触しているうちに、相手に好感を抱くようになる。この事実を発見した学者の名を取り、ザイアンス効果(単純接触効果)と呼ばれる。

 私たちの脳は、繰り返される不快な刺激に「慣れる」ようになっている。飛行機の爆音の中でも眠れるのはこのためだ。繰り返される同じ刺激にはフィルターがかけられる。

 あれだけ不快だったものが、脳のフィルターを通して意識を素通りするようになり、不快なものが目に入らなくなってくると、私たちは感じ始めるのだ。「彼らの言っていることにも一理ある」と。

 かくして、最初の不快さを通り越すと、人々は反倫理的な行動をとる人々の声を、いつの間にか聞き始めてしまう。不快な行いを取るのも仕方のない理由があるのだ、と自分を納得させ始めてしまう。人の認識能力の要領のよさ、都合のよさが、反倫理的行動を取る人々に力を与えてしまうのである。

 ただ、この人間の認識構造と、アテンションに金が流れる社会構造が分かれば、皆さんも適切な対応が取れるはずだ。反倫理的なアプローチを取る人たちの話を聞いているうちに、それも一理あるなんて感じだしたら危ないサインである。

 いかに話に理があろうとも、選挙という大切な社会の仕組みの目的外利用だ。性善説で作られた社会システムが悪用されてしまえば、性悪説による社会システムに切り替えざるを得なくなる。

 疑わしきを罰する窮屈なディストピアを願わないのであれば、私たちは自分たちで善き社会システムを守っていかねばならない。