夜遅くまで残業すると、すでに我が子は夢の中……。そんな働き方をしてきた世代にとっては、定時で帰り、家事と育児に取り組む働き方があると言われてもピンと来ないかもしれない。一方、令和に幼子を育てるミレニアル世代は、さまざまな工夫をしながら仕事と家庭を両立しているという。※本稿は、本道敦子氏、山谷真名氏、和田みゆき氏『〈共働き・共育て〉世代の本音』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。また、本記事に使用したアンケートは「子どものいるミレニアル世
残業時間の長さと切り離せない
家事・育児時間の現実
本稿では、職場の働き方について紹介していきたい。図2‐1は、男性の残業時間と家事・育児時間を表したものである。
男性の職場での残業時間が長いほど、家事・育児時間が取れず、ほぼ定時に業務を終えている人は、より長い時間を家事・育児に充てているというものだ。育児と職場の働き方は切っても切れないものだということが、一目瞭然である。
拡大画像表示
ここからは、自ら意識的に働き方を変え、早く帰ろうと努力する男性たちの話を紹介していく。個人の努力で働き方を変えたケースを取り上げているが、いずれの場合も職場の雰囲気や上司の理解が前提となっている。
「育児をしたいが、仕事量が変わらないから早く帰れない」という人は多いであろう。これから紹介する石田さん(男性・技術系・子どもあり)は、会社のフレックス制度を使って、育児のできる環境を自ら作り出した男性である。
石田さんは、社内異動を繰り返しながら街づくりに関する大きなプロジェクトを任され、妻の育休中も深夜のタクシー帰りをしていた。しかし同じく残業の多い職種の妻の育休が終わると同時に、週の半分は育児のために早く帰ることを決心した。そのため石田さんは普段の働き方を見直すことに注力し、「自分は育児をしている人」と公言して周囲の理解を得る戦略を立てた。その手段として石田さんは育児のために使える育児フレックス制度を申請し、職場の理解を得たのである。育児中心の生活をこう説明してくれた。
「保育園の送りは妻と一緒に行き、迎えも妻と調整して、週の半分は行っていました。会社を定時の5時半に出て、急いで帰れば保育園にも学童にも間に合います。迎えに行って、ご飯を作って、食べさせて、寝かせてというのは苦ではないです」
定時で帰ることができるようになったので、結局、フレックス制度で勤務時間をずらすことはしなかったという。制度を戦略的に使った事例である。しかし、それまで残業をして終わらせていた仕事は、そのまま残っている。どうやって仕事をこなしていたのであろうか。