ただ、税を暮らしの会費に変えるというと聞こえはいいですが、実際には、いろんな反発がありそうです。

 一番大きな心配は景気が落ちこむことです。まずは数字を追いかけてみましょう。2014年4月に消費税が5%から8%に引きあげられました。その結果、実質GDP成長率は前年度の2.7%からマイナス0.4%に3%以上も低下しました。

 たしかに増税後の経済成長率はさがっています。でも注意したいのは、前年の2.7%という数字は第二次安倍政権のなかでもっとも高い数字だった、ということです。これは増税後の消費が増税前に移動した「かけこみ需要」の影響です。

 2019年10月の8%から10%への引きあげのときは、2018年度の0.2%からマイナス0.8%への低下ですから、さらにおだやかな変化でした。ちなみに、19年の10月に大型台風19号が日本経済に深刻な打撃を与えました。それでも、1%減という小さな変化でしかなかったのです。

 2019年の増税のときにはおもしろい変化が起きていました。家計消費が落ちこんだかわりに政府消費が伸びたのです。理由は、消費増税で手に入れたお金をもとに、幼保や大学のお金を政府がかわりに支出したからです。

 家計の最終消費支出はマイナス1.1%でしたが政府最終消費支出は2.1%伸びています。2014年度のそれがそれぞれマイナス2.6%、0.9%だったのとは大ちがいです。これは、増税によってあつめたお金をきちんと給付に結びつけていけば、景気へのマイナスの影響を小さくできる、という可能性を示唆しています。

経済の底力を引きあげよう!

 みなさんは自分が何歳で死ぬか、知っていますか?

 くだらない質問だと思わないでください。これは本質を突く質問です。だれも自分の寿命なんて知らないですよね。そうなんです。だから、私たちは、100歳まで生きてもいいようにお金を貯めるのです。でも、たいていの人はその前に死んでしまいますから、過剰貯蓄、裏をかえせば、過少消費がものすごい大きさで発生してしまっています。

 これは切実な問題です。僕には4人の子どもがいますが、この子らが全員、私立の中学、高校、大学にいきたい、と言いだすかもしれません。すると塾や習いごとをふくめて、5000万円以上のたくわえが必要になります。子どもを産み育てるのは本当に命がけです。

 もちろん、だれも進学しない、ということもありえます。そうだとすれば、これらのたくわえは、本当は消費に使えたはずのお金だったことになります。これらのお金を消費にまわせていれば、いまの経済が成長し、所得が増え、あらたな税収が生まれたはずなのです。