住所変更手続きも画期的である。PINでログインし、氏名、新旧の住所、電話番号、メールアドレスを入力すると、確認書類が送付され、それにサインすれば、手続きは1回で全て完了する。住民登録だけではなく、各種行政機関や郵便局にも自動通知される。さらに、本人が希望すれば、銀行や証券会社、保険会社、クレジット会社などの民間企業にも変更情報が通知されるため、一度の手続きで全ての住所情報が自動的に変更されるのだ。

民間企業のビジネスにも活用
センシティブ情報は峻別して保護

 この他、注目すべきスウェーデン独自のシステムに、SPAR(Swedish Population and Address Register) がある。SPARは、国税庁所管の独立性の高い機関で、広く社会に対して、住民の正しい情報と住所情報を提供することを目的としている。例えばSPARから情報を得た民間企業が、子どもの生まれた親におむつの広告を送ることができるのである。

 もちろん、民間企業からの要請を受けた場合、情報提供を行うか否かについては、SPAR委員会が厳格な審査を行った上で決定しており、また、自分で情報が使われるのが嫌な人はオプトアウト(拒否の選択)ができるが、スウェーデンではオプトアウトは人口の1.4%程度に過ぎず、SPARは一般には便利なサービスとして認識されているようだ。

 ところで、スウェーデンでは、個人情報の保護は、どのようにして図られているのだろうか。PINは1966年から記録のコンピュータ化が開始されたが、1973年に独立性の高い第三者機関であるデータ検査委員会が設置され、個人情報の尊厳を守ることを主眼として監督を行っている。

 1973年に施行されたデータ法は、1998年にEUデータ指令に基づき、個人データ保護法として改正されたが、個人情報は①当該行政機関の行う事業の目的に沿った利用である場合、②本人の身元確認の必要がある場合、③その他、これに準ずる理由がある場合に限って、利用可能であると規程されている。なお、①は本人の同意は不必要である(統計利用がその典型)。一方、人種、宗教、思想信条、労働組合加入の有無、医療などのセンシティブ情報は、原則、コンピュータ処理をしてはならないと規定されている。