水素業界は「陣取り合戦」の様相
JR各社はそれぞれ独自に動く
海外ではオーストラリアやドイツなどで水素活用のロードマップが策定されている。日本でも現状200万トンにとどまる水素の供給を、40年までに1200万トンに引き上げる方針を示している。直近では、割安な天然ガスとの根差を補助する「水素社会推進法」とその関連法案が3月に成立した。国のバックアップが、今後の注目点となる。
なお、同法では「低炭素水素等」としてアンモニアも補助対象となっており、国内では三井商船「フェリーさんふらわあ」の一部船舶で、燃料として使用されている。しかし、アンモニアは毒性があり、タンクやエンジンルームのすぐ上、床板を挟んで多くの乗客を乗せる鉄道とアンモニアの相性は良くないと思われる。
また、“水素業界”にはENEOSだけでなく、出光興産や岩谷産業、千代田化工などの大手サプライヤーもいるし、水素を消費するバイヤーも今後増えていくだろう。
JR東日本は水素ステーション建設で千代田化工と協力関係にある。一方、JR西日本は液化水素のサプライチェーン構築で関西電力と連携している。今後は液化水素にノウハウを持ち、関西経済連合でのつながりも深い岩谷産業などと組む可能性が高いだろう。
水素業界は有力なサプライヤーとバイヤーを取り込む陣取り合戦の様相を呈しており、JR各社はそれぞれ独自に動いている。将来的に有望なJR東海と、ENEOS、日立は手を結ぶことでどんなノウハウを得て、今後の経営に生かしていくのか。水素社会の「夜明け前」に繰り広げられるチャレンジは、確かな試金石となるはずだ。