中央本線・甲府駅に停車中の石油タンク列車中央本線・甲府駅に停車中の石油タンク列車。こういった車両や設備を、将来的に水素輸送に使えるかもしれない Photo by Wataya Miyatake

JR東海が抱える悩みは「地方」
ENEOSは石油輸送ルート活用を模索

 水素に関してJR東海が抱える悩みはずばり、地方にある。都市部では水素供給インフラがある程度の整ってきたものの、同社の非電化区間である高山本線や紀勢線などは名古屋市から離れ、かつ片道200kmほどもある長距離を走行する。

 これら区間で水素動力車両を運行するには、多量な水素を送り込み、MCHから水素を取り出す設備や、タンクローリーなどで地方の各拠点に供給し、トルエンを送り返す作業が必要となる。

 ここで、ENEOSの動向を振り返ってみよう。同社は以前から、既存の石油輸送ルートを活用したMCH輸送を模索している。JR南武線沿いや山梨県、長野県に住む人なら、緑色のタンクにENEOSのロゴが付いた石油タンク列車を知る人も多いだろう。あれで水素を運ぼうというのだ。

 もし、MCHの鉄道輸送が実現すれば、神奈川県・根岸のENEOS製油所~長野・南松本~三重県四日市・塩浜における貨物輸送網を生かして東海地区に運び込み、石油タンクを転用した設備で、日立がMCH→水素ガスへの変換を担い、タンクローリーで車両区(例えば高山本線なら美濃太田車両区)に運びこんで、“給水素”を行うことが可能になる。

 ただし、現時点では青写真に過ぎず、JR東海からはこういった具体的な輸送手段やルートは明らかにされていない。今後の3社の協業に期待したい。

図表:国土交通省の資料ENEOSは水素の鉄道輸送を模索している(国土交通省の資料) 拡大画像表示