AI(人工知能)サービスを提供するプリファード・ネットワークスが、米半導体大手エヌビディアの「一強」を切り崩す攻勢に打って出た。2027年に製品化を目指す独自のAI半導体が切り札だ。特集『AI半導体 エヌビディアvsトヨタ 頂上決戦』の#11では、西川徹最高経営責任者(CEO)に、日本企業としてエヌビディアに真っ向勝負を挑む戦略の要諦を聞いた。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
エヌビディアのGPUは高すぎる
AI半導体の新規参入にチャンス
――生成AI開発の需要で、米エヌビディア製のGPU(画像処理半導体)が不足している現状をどう見ていますか。
米ビッグテック企業が生成AIの大規模言語モデル(LLM)開発に力を入れているのでGPUをたくさん買っていますが、やはりちょっとお金をかけ過ぎなのではないでしょうか。
今は少し落ち着きましたが、生成AI開発というだけで米国のスタートアップが巨額の資金調達ができてしまったので、その資金でGPUをどんどん買って需給が逼迫しました。
その中で、日本のさくらインターネットなどは頑張ってGPUを買い集めていますが、それでも数千基のレベルです。品薄のところにエヌビディアの一存でGPUが配られている状況なので、AI開発者にとっては大きなリスクです。
特にスタートアップは、高額なGPUを自社で沢山持っていると事業で回収するのは難しくなる。大企業だって、外に出せないデータを活用してオンプレミス(自社所有)でLLMを開発しようとしてもGPUのコストは割に合わない状態です。
――半導体業界のみならず生成AI業界全体で「エヌビディア1強」の状態です。そこに死角はあるのでしょうか。
もはやエヌビディアのGPUは高過ぎる。相当ドラスティックにアーキテクチャー(コンピューターの設計思想)を変えないと持続可能性がないのではないでしょうか。ただ、エヌビディアは巨大な上場企業で多くの人を雇っているので、そう簡単に方向転換ができないでしょう。
そこにスタートアップがAI半導体を作るチャンスがあります。スタートアップが新しいアーキテクチャーを作ってきた歴史には事欠きません。エヌビディアだって最初はスタートアップでしたが大きくなり過ぎたのでしょう。そこに大きな勝機があると思っています。
「勝てると思わなければ莫大なお金を使って半導体の開発などやらない」と断言する西川CEO。プリファードは独自の半導体開発で、いかにエヌビディアの牙城を崩そうとしているのか。次ページで、その戦略の詳細を語った。