SNS、チャット、メール……現代は、史上だれも経験したことのない「言葉の洪水」に襲われている。あなたも毎日、ペーパーワークに何時間奪われているだろうか? そこで、ビジネスパーソンに「簡潔化」の作法を指南する本が誕生、世界でベストセラーとなっている。全米25万部を超えた他、世界16か国以上で刊行の話題作『Simple「簡潔さ」は最強の戦略である』より、内容の一部を特別公開します。
人生を形づくった「一言」
2015年末のことだった。私たち3人は、自ら創業してわが子のように育ててきたポリティコ社を去るため、秘かに泥沼の闘いを繰り広げていた。オーナーであるロバート・アルブリトンに苦しめられていた。思いきり見返したかった。
ジムは、ヴァージニア州アレクサンドリアのクライスト・ザ・キング教会の信者席に座っていた。
デイヴィッド・グレイド牧師が「善良であることの難しさ」について話しているあいだ、ずっと考えていた。
牧師は、彼の子どもたちが人生のさまざまな混乱や難題に直面し、思い悩んでいると語った。人はどうすればつねに正しい行いを選択できるのかと。
グレイド牧師は、存在をめぐるこの壮大な問いをわかりやすい話に置き換えた。彼は子どもたちに、ある知恵の言葉をかけたという。
私たちはその言葉に導かれてポリティコを去った。
そしてその言葉が、私たちが今日歩んでいる人生を形づくった。
「できるのは、正しい選択を1つずつ重ねることだけ」
力強い文章は「簡潔」である
なんともシンプルで率直であり、しかも印象的な1文だ。
牧師は『ルカによる福音書』からの引用をまじえて長々と話すことも、ヘブライ語で詩的に表現することもできたはずだが、そうはせず、たった一言で伝えた。
短く、賢く、シンプルかつ率直であることが相手の心に届き、長くとどまる──グレイド牧師は、現代のコミュニケーションの唯一最大の教訓を見事に実践した。
牧師は2021年10月、会衆へのメッセージのなかで、英文学者ウィリアム・ストランクの『英語文章ルールブック』から次の一節を引用している。
「力強い文章は簡潔である。文には不要な言葉を入れず、パラグラフには不要な文を入れないようにすべきだ。絵に不要な線があってはならず、機械に不要な部品があってはならないのと同じである」
(本原稿は、『Simple 「簡潔さ」は最強の戦略である』からの抜粋です)