それに一般的な買収防衛策は、先に述べたとおり買収者が発行株式の20%以上を買った時点で発動されます。しかし我々は多くの場合それ未満しか買わないので、防衛策が発動されることはありません。その意味でも、“使える”シグナルなのです。

 逆に投資先の企業が買収防衛策を導入している場合には、その廃止を提案することが通例です。これから企業の価値を高めようというときに、多くのプロの投資家から評価されない買収防衛策を継続する必要は何もないからです。

日本や米国を騒がせた
“敵対的買収”事件

 日本で敵対的買収が大きな話題になったのは、2005年にライブドアがニッポン放送株を買い占めたときでしょう。

 当時、ニッポン放送ははるかに規模の大きいフジテレビの大株主でした。つまりニッポン放送の経営権を取得すれば、間接的にフジテレビの経営にも参画できる。そういう歪な構造になっていたわけです。テレビメディアに興味を持っていたライブドアは、そこに目をつけてニッポン放送株を買い進めます。東証の時間外取引を利用することで、ある日突然筆頭株主に躍り出ました。

 慌てたニッポン放送とフジテレビは、ニッポン放送が取締役会決議により(株主総会の承認なしで)フジテレビに対して既存株をはるかに上回る新株予約権を発行すると発表。株の価値を大幅に希薄化することで、ライブドアの持ち株比率を引き下げ、影響力を排除しようとしたわけです。

 それに対し、ライブドアはこの行為が商法に反するとして、東京地裁に差し止める仮処分を申請。これが認められ、新株予約権発行による買収防衛は不可能になりました。

 結局その後、両社は和解し、ライブドアは保有するニッポン放送株をフジテレビに売却。フジテレビはライブドアに出資することで業務提携を結ぶことになりました。

 そして、2007年には、米国のアクティビスト・ファンドであるスティール・パートナーズが、ブルドックソースの株式に対して公開買付け(TOB)を実施しました。

 しかしブルドックソースが株主総会の特別決議を経て買収防衛策を発動し、結局スティール・パートナーズは撤退しました。