投資成功:投資先企業がM&Aされる

「M&A」とは「Mergers(合併) and Acquisitions(買収)」の略称で、事業会社等の第三者に株式を売却し、その売却によってリターンを得ることです。スタートアップ投資の場合、リターンは投資額の数倍~数十倍程度になることが多いとされます。

 日本企業のイグジットの内訳をみると、IPOとM&Aの比率は7:3程度の割合でIPOが多いといわれています。イノベーションの中心地であるアメリカではIPOよりもM&Aなどが一般的であり、日本とは逆で9:1でM&Aのほうがリターンを得る可能性が高いとされています。投資家にとってはM&AによるリターンはIPOほど大型ではないものの、投資先企業にとっては上場のような準備の必要がなく、比較的期間が短くても実現可能で、買い手側とのシナジー次第では自社単独よりも成長が期待できるというメリットがあります。

 近年はスタートアップの出口戦略としてのM&Aを促進するため、税制の優遇措置が導入されるなど、M&Aを目標とするスタートアップとシナジーを生みたい大企業双方にとって、追い風が吹いている状況といえるでしょう。

 以上が、スタートアップにおける投資成功のシナリオです。

 数回イグジットを経験されているとあるエンジェル投資家の方は、自身の投資戦略について「年間に10社程度に投資し、10件中1件がM&Aイグジットを達成すれば、その利益でさらに10件のエンジェル投資を実行する。それを繰り返す間に、ホームランとなるIPOを達成する会社をじっと待つ」と話していました。

 スタートアップがイグジットしない場合は、次のような結果をたどることになります。

投資先企業がイグジットせず、存続し続ける

 投資先がイグジットも倒産もしない場合、投資家にとって株式を売る機会はほぼありません。当初描いていた事業計画の目論見が外れて事業転換を行うことをスタートアップ業界では「ピボット」といい、スタートアップでは比較的頻繁に起こります。ピボットを繰り返している間は投資家にとって損失が確定するわけではありませんが、文字どおり「塩漬けのまま売れない」状態になります。

投資先企業が倒産・清算する(投資失敗)

 投資先企業が倒産・清算すると、投資した金額についてはほぼ無価値になりますので、投資元本を上限に損失が発生することになります。