ランキングというのは一つの指標になるが、サンプルの数や質が偏っているケースもあり、鵜呑みにはできない。それだけでなく、メディアや企業は、自分にとって都合の良いデータを集めて人を“騙す”ランキングをいとも簡単に作成できるという――。※本稿は、松本健太郎『人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学』(毎日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。
知識のない一般人にイメージを尋ねた
ランキングに価値はあるのか?
日本人はランキングが好きだと言われています。古くは「相撲の番付表」から、近年では「理想の上司ランキング」まで、古今東西の物事になんでも格や順位(ランク)を付けたがる傾向があります。
格付け自体は何も日本に限った話ではなく、フランスを本拠地とする世界的タイヤメーカーのミシュランが刊行する「ミシュランガイド」は、世界中のレストラン・ホテルの格付けをしています。またその「ミシュランガイド」の星付きレストランを訪れる人は、万国共通でたくさん存在しています。
どうして人は「ランキング」を無邪気に信じてしまうのでしょうか。
面積や人口など万国共通の「ものさし」に照らしたランキングや、信頼性があり納得できるランキングならまだしも、一般人の感覚と異なっていて話題になるものも中にはあります。
不動産・住宅サイト「SUUMO」が毎年発表する「住みたい街ランキング」は、決して信頼性の低いものではありませんが、その結果がよく話題にのぼるランキングの一つです。
2019年の「関西版住みたい街(駅)ランキング」のトップは、7位に京都(JR東海道本線)がランクイン、12位に桂(阪急京都線)、14位には嵐山(阪急嵐山線)が続々とランクインするなど、昨年と比べて京都勢がランクアップを見せました。
一方、同時期に発表された「住みたい自治体ランキング」では、京都勢は10位に京都市中京区がランクイン、16位に京都市北区、20位に京都市左京区がランクインしていました。
ただ「駅ランキング」上位の「京都駅」は「下京区」、桂駅と嵐山駅は「西京区」ですから、「住みたい街(駅)ランキング」の結果と矛盾しているように感じます。
ちなみに「住みたい自治体ランキング」で下京区は30位、西京区は47位と、「住みたい街(駅)ランキング」と比べると大きな乖離がみられます。「駅」と「自治体」でランキングに乖離がみられるのは、「イメージ」の問題ではないかと筆者は考えています。
これは仮説に過ぎませんが、東京の場合なら港区に品川駅があり、品川区に目黒駅があるように、京都の具体的な土地勘が無い人は、京都駅は中京区にあると思い込んでいるかもしれないと感じました。
もしかすると、京都にあまり詳しくない人が「イメージ」で京都を代表する駅を「京都駅」、自治体を「中京区」とした回答が「住みたい街ランキング」には含まれているかもしれません。