「理想の上司」ランキングで
内村と水卜が連続トップの謎
2つ目は「指標の妥当性」です。
それこそ「新宿駅前にいたOLに聞いた」だけでは「すべてのOLに対するアパレル人気調査」としては問題があるので、せめて質問の仕方を変えなければならないのです。
例えば明治安田生命が毎年実施している「理想の上司ランキング」では、就職を予定している新卒男女1100人に対して、「バラエティ」「スポーツ選手・監督」「俳優・歌手」「文化人」の各部門から「理想の上司」1名を選んでもらう方式で作成されています。3年連続で男性は内村光良さん、女性は水卜麻美さんが選ばれています(編集部注/2024年2月時点では、両者とも8年連続のトップ)。
内村さんは「親しみやすい」「優しい」「頼もしい」が、水卜さんは「親しみやすい」「明るい」「おもしろい」が選ばれた理由だそうです。それを見る限り単に好きなタレントを選んだだけではないのか、という「指標の妥当性」についての疑問が生じます。
逆に言い換えれば「数字の信頼性」「指標の妥当性」が一見ありそうなランキングを作れば、自分に都合の良いデータを集めて、人を騙せるランキングを簡単に作成できます。
それっぽい数字が出て来れば、多くの人はそれっぽく解釈して、無いはずの傾向を見出し、京都駅が人気だとか、テレワークは浸透しているとか、内村さんは良い上司っぽく見えるとか好き勝手に解釈してくれます。
数字の意味を読み取らず、上辺だけを解釈する現象を「錯誤相関」と言います。
AとBに相関が無い(関係性が無い)のに、関係性があると思い込んでしまう傾向。運命論者や占い好きに、錯誤相関は多いかもしれません。
・具体例
黒猫が目の前を横切った日は、何か不幸が起きる。シャーペンの中の芯が折れた日は、何か不幸が起きる。こうした「迷信」が生まれるのも、黒猫が横切った偶然や、シャーペンの中の芯が折れた偶然と、なんら関係が無い不幸を紐付けるからです。