多数派に判断を委ねてしまう
「みんな」は魔法の合言葉

 どうすれば、ランキングに騙されないでしょうか。

 将棋のルールを覚えれば藤井聡太さんに勝てるとは限らないように、データを扱う方法論を学んだだけでは「偽ランキング」を見抜く力は養えません。ある種のセンスが必要なのだろうと筆者は考えています。

 一方で、そうした「データを扱うセンス」とは別に、「性格が素直じゃない人」「ひねくれている人」は偽ランキングにあまり騙されないような印象があります。

 まわりの意見がどうあれ、自分が納得しないと気が済まない人、正しいかどうかの根拠や理屈を重視する人は、同調圧力が高いとされる日本社会では浮いてしまいそうですが、偽ランキングに騙されないという点では非常に優秀な人材ともいえます。

 逆に言えば、日本人の多数派は良くも悪くも付和雷同的で、周囲が「良い」と言えば「良い」としがちな性格なのかもしれません。「日本人はランキングが好き」なのはリテラシーの問題以前に、そういう性格的な理由が大きいとも考えられます。

 一方、そうした日本人の性格を踏まえると「ランキング」の「魔力」を活用することは「熱狂」を作り出すうえで必須のテクニックとも言えます。日本人の多数派は事実を確認しないままランキングで順位付けされた結果だけを受け入れがちなのです。

 いわゆるランキングでなくとも、例えば「食べログ」や「ぐるなび」など、レストランを星の数で評価するサイトにおいても、似たような傾向が見られます。

書影『人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学』(毎日新聞出版)『人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学』(毎日新聞出版)
松本健太郎 著

 多数の消費者はこうしたサイトにおいてどういうロジックで星が付いているかを知らないまま、星の数を鵜呑みにしてお店に行くかどうかを決めています。

 もちろん「食べログ」や「ぐるなび」ではユーザーの評価に基づいて星がつけられているので、これらのサイトにおける「星の数」とは、いわば「多数派の支持を集めている証拠」ともいえます。

 ですので、ランキングや「星」をもとに判断するのは、ある意味では「多数派」に判断を委ねているような状態とも言えます。

 みんなやっている、みんな使っている、みんな遊んでいる、みんな食べている。「みんな」は魔法の合言葉です。