意外に国際化が進む日本のスポーツ事情
昭和の東京五輪は「今は昔」
そして第三に、忘れてはならないのは、チーム自体の国際化です。世界で勝負する日本代表に外国人を入れることを容認したのは、ラグビー協会が最初でした。ラグビー日本代表には、帰化した選手と外国籍のまま代表資格を得た選手の両方がいます。
たとえば、リーチマイケル選手は日本国籍を取得している帰化選手で、ピーター・ラピース・ラブスカフニ選手のように、外国籍のまま日本代表としてプレーしている人もいます。これは国際統括団体ワールドラグビーの規定が他の競技より寛大で、その国・地域で出生し、両親または祖父母のうち1人がその国・地域生まれで、直前の5年間継続居住(2021年末までは3年間)および通算10年居住といった条件を満たせば、資格を得られます。そのため、日本代表には多国籍の選手が集まりやすいのです。
さらに、五輪日本代表の外国人に関する規定も変わりました。国際オリンピック委員会(IOC)の承認があれば、国籍変更をしてその国の選手として出場できます。また、二重国籍を持つ選手はどちらの国の代表として出場するかを選ぶことができます。帰化した選手が新しい国の代表として出場する場合も、IOCの承認を得るだけでOKです。
いずれにせよ、海外にルーツを持つ選手たちの活躍が、海外で行われる試合への恐怖感を取り除き、外国人とプレーすることへの「慣れ」を生んでいることは事実です。また、若い選手が引退後、協会の運営に携わり、大改革を行ってスポーツを強化した例も見逃してはなりません。
フェンシングで初めて五輪メダルを手にした太田雄貴選手は、その後フェンシング協会の会長となり(現在は理事兼IOC理事)、転職サイトを利用して無給の大企業の専門家を招き、副業の理事として専門的な観点から集客、スポンサー集め、宣伝、チケット販売などに起用しました。
フェンシングの「観るスポーツ」としての問題は、ルールが難解で勝敗がわかりにくいこと。これを改善するため、映像装置やLED照明を使いました。「剣の動きが速すぎて見えない」というのが最大の問題点でしたが、多数の4Kカメラで剣先の動きを撮影し、AI処理で可視化する「フェンシング・ビジュアライズド」を導入するなど、エンタテインメントの要素を加味して、すべての種目の決勝を2018年の東京グローブ座で開催しました。
シェイクスピアを演じるような本格的な劇場で、チケット価格は平均5000円。それでも40分でチケットは完売し、翌年は渋谷公会堂で開催、チケットも3500~3万円でしたが、約3200席を完売しています。
こうして見てくると、昭和の東京五輪と令和のパリ五輪では、同じ日本人選手であっても違う人種なのかもしれないと思わずにはいられません。
(元週刊文春・月刊文芸春秋編集長 木俣正剛)