「1人で全部できる」は傲慢な思考
「上手に人に頼る」のもスキルのうち

 多くの人は「なんでも自分でできること」「人に頼らないこと」が自立であり、大人の証だと思っているかもしれません。

 とくに“自己責任社会”といわれる現代では、若者も、母親も、高齢者も孤独。仕事の現場では30歳でも50歳でも「これは自分の仕事だから」と人に頼れず、仕事を抱えて、孤独や不安、絶望に陥っている人が多いのではないでしょうか。

 厳しいことを書くようですが、「1人で全部できる」と思うのは傲慢であり、未熟さの現れ。とくに40代50代で体力が衰えたり、新しいITスキルが追いついていなかったりしても、「若いときと同じようにできるはず。いや、経験があるからもっとできるはず」と思い込んで、なんでも抱え込む人が多いようです。

 しかし、「自己責任」で突っ走った結果、いろいろなことが中途半端になったり、過労やうつになったりして、潰れてしまうのです。

 ほどよく頼るのも、「自己責任」であり「自立」です。大人というのは「自分はこれができて、これができない」「これ以上はきつい」と、そのままの現実を認めて、人に頼ったり、スピードを緩めたりして自分を守ることができる。「人間は万能ではない」と知っているので、自分がどんな仕事にフォーカスすればいいかもわかるはずです。

 以前、生活保護を受けなくて餓死するという事件がありました。「頼ることは恥ずかしいことだ」という刷り込みがあったからでしょう。

 私も以前は人に頼るのが苦手で、「迷惑をかけるんじゃないか」「自分でやったほうが楽」と抱え込んでいました。しかし「自分が頼ると、相手も頼りやすくなる」「頼ることで、信頼関係が生まれる」と考えを改めてから、堂々と頼るようになりました。

「上手に人に頼る」のは、仕事のスキル以上に大切な生きるスキルかもしれません。

頼る人を何人かもつことは、いい仕事をするため、生きるための必須条件です