米国の景気後退リスクが高まっている

 2024年の前半まで、米国では消費は堅調で労働市場がタイト気味に推移した。毎月の時間当たりの賃金は、前年同月比で4.0%を上回った。実質賃金は高止まりし、米国の底堅い個人消費と相対的に高い経済成長を支えた。

 AI業界の成長期待も上昇し、米株の上昇を支えてきた。22年以降の金融引き締めにも関わらず、世界の金融市場はカネ余り状況が残り、期待先行で米ナスダック上場銘柄や半導体関連の銘柄は上昇してきた。

 7月上旬、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は「利下げ」の可能性を示唆。FRBが9月にも利下げを行うとの期待が上昇した。金利低下で、一時的に、日米をはじめ世界的に株価上昇にモメンタム(勢い)が付いた。そうして7月10日、ナスダック総合指数が史上最高値の1万8647.45ポイントを付けた。その時点で、年初からの上昇率は24%に達していた。日経平均株価も最高値を更新した。

 しかしながら、景気が長期間にわたって回復傾向を維持することはない。7月下旬、米国では予想を下回る経済指標が増えた。住宅の販売の減少、コロナ禍で空室率が上昇したオフィスなど商業用不動産関連の不良債権増加などだ。景況感の軟化で、FRBは金融引き締めを継続すべきと主張した経済の専門家の見解も変化した。

 7月30、31日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、米国経済には利下げが必要との主張が増えた。その背景には、所得水準の低い層を中心に個人消費が減少している懸念があった。米国の景気不安は高まり、割高との指摘が多かったナスダック上場銘柄を中心に、米国の株価は調整した。

 それに伴い、リスク回避に動く投資家は増え、ドルが円などに対して下落した。7月末、想定外に日銀が利上げを実施したことも円の買戻しにつながった。円高進行で、日本株を売る海外投資家などは増えた。