7月26日の米ニューヨーク市場でハイテク関連の銘柄などが上昇したことを受け、29日の東京株式市場は取り引き開始直後から半導体などの銘柄に買い注文が集まった。7月末~8月頭にかけて、マイクロソフトやメタ・プラットフォームズ、アップル、アマゾン・ドット・コムなどが決算を発表する。業績が好調で半導体需要の底堅さが分かれば、ハイテク株は一段と買い戻される可能性が高まる。中でも注目は一時、時価総額が世界トップに躍り出たエヌビディアだ。AI分野で独走する同社であるが、その座を狙う「ライバル候補」の存在も見逃せない。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
AI分野を独走するエヌビディア
その座を狙うライバル候補とは?
米オープンAIのChatGPT公開をきっかけに、世界全体でAI業界の成長は加速している。けん引するのは、演算処理能力の高い「画像処理半導体」(GPU)を設計・開発する米エヌビディアだ。
AI分野でエヌビディアは独走状態が続いている。エヌビディアのチップを多く確保した企業は有利にAIを開発できる。エヌビディアの仕様を満たすか否かで、メモリーメーカーや、台湾積体電路製造(TSMC)など半導体受託製造企業の業績回復にも差が出ている。
ただし、状況は日々刻々と変化している。エヌビディアの独走を阻止する可能性を秘める注目企業が、米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)である。近年、AMDはAI関連企業を立て続けに買収し、規模を拡大。演算処理能力の高いAIチップ、ユーザー支援のためのソフトウェアを開発し、エヌビディアとのシェアの差を縮めようとしている。
メモリー業界の競争も激化している。こちらも注目企業である米マイクロン・テクノロジーは、HBM関連で日本国内での設備投資の積み増しを検討しているようだ。供給量の拡大により、韓国のSKハイニックスからシェアを奪うなど一段と競争力を高めようとしている。
GPU需要を取り込んで急成長中のエヌビディアだが、その勢いが未来永劫(えいごう)続くとは考えづらい。むしろ、早くも今後5年間で、GPUの“課題”に目を付けたライバルの追い上げにより、エヌビディア包囲網は狭まるだろう。