――職員会議の結果、この便所の使用は禁止となった。

 そして現代の便所怪談は「扉」を通じた「問答」が主流となった。つまり「トイレの花子さん」だ。3番目の個室の扉に「花子さん」と呼びかければ返事がくる。これは花子さんという少女霊との交信であると同時に、子どもたちが交流を深めるコミュニケーション儀式でもある。だからこの儀式は集団で行うべきで、けっして一人で試してはならない。

――放課後の小学校で、4人の女生徒がトイレの花子さんを呼ぼうと盛り上がっていた。「今日は違うやり方をしよう」。薄暗い教室で誰かがそう言い出した。「一人ずつ女子トイレに行こう。そうすれば怖くて楽しいよ」そんな誰かの提案に、いいねと4人が頷いた。

 まず一人目の子が笑いながらトイレに向かう。すぐに逃げ帰ってくるだろうと思いきや、その子はいくら待とうと戻ってこない。おかしいね、と3人で顔を見合わせていると。

「トイレで待ちぶせしてビックリさせようとしてるのかも」また誰かがそんなことを言う。「じゃあ逆に大声出して脅かしてやる」と二人目の子がトイレに向かった。しかしその子も、いくら待とうと戻ってこない。

「具合が悪くなって倒れているのかも」また誰かが心配そうな声をあげたので、三人目の子が真剣な顔でトイレに急いだ。しかしその子もいくら待とうと戻ってこない。

 一人きりで残された子は、おびえながら女子トイレに向かった。いったい3人ともどうしたのか、もう帰ってしまったのか……。そう思いつつ足を踏み入れてみると。

 トイレの中の三つの個室は、すべて扉が開いていた。

 そして3人の友だちは、それぞれの個室で一人ずつ、首を吊ってぶら下がっていた。

POINT
・「のびる手」「開かずの扉」「奇妙な問答」が便所怪談の主な傾向
・学校への便所の普及に伴い、特に小学校の怪談として語られていく
・水洗式への移行で「のびる手」は廃れ「トイレの花子」が誕生した