「ガラガラの優先席」に座ったらSNSで賛否両論…ジョージア大使が本当に伝えたかったこと写真はイメージです Photo:PIXTA

駐日ジョージア大使が、空いている電車内での日常の動画をX(旧Twitter)に上げたところ、「優先席に座っている」などの批判が集まった。「ジョージアではこんなことは議論どころか話題にすらなりえない」という著者から見た「ルールの島国・日本」の美点と見直すべき点とは。本稿は、ティムラズ・レジャバ『日本再発見』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。

空いている電車の優先席に
座っただけでSNSに多くの批判

 2023年6月、私が電車の優先席に座って読書している様子を動画に撮って「ゆらゆら都心へ進みます」とツイッター(当時。現「X」)にアップしたところ、3000以上のコメントが付き、1万RT(リツイート。現在の呼称はRP=リポスト)、2500万インプレッションという驚くほどの反応がありました。

 私は日本生活が長いですから、電車の優先席は、必要とする人がいれば譲るべき場所だということは、当然知っていました。ですからそこに誰も座っていないこと、および改めて注意書きの文面を確認した上で、スマートフォンを使用して撮影し、アップしたのです。

 すると予想をはるかに超える大きな反響がありました。「優先席に座って大丈夫か」「あそこは誰もいなくても空けておくのが美徳なんだ」といった批判があり、さらにほかのユーザーがその批判に反論するなど、あっという間に私の手を離れて一大論争に発展していったのです。

 私は何より、その反応の「量」に驚きました。私の意見に対する批判が多いのか、はたまた擁護が多いのかということよりも、「日本ではこの話題でこれだけ議論が広がるのか」という驚きです。

 実のところ、投稿する前から、多少の賛否両論があるかもしれないとは予感していました。しかし、「これは決してマナーを破った行為ではない」と判断し、私なりに信念を持った上で「日本人はルールが必要以上に細かく、同調圧力が強い」ことを伝え、考えてもらいたいと思い、あえて投稿した部分があったのです。

 かねてから私は、日本生活の中で、日本人の高い規範や規律意識の裏返しとして、マナーをきっちり知らない、守らない人間に対する厳しい視線があることに、ストレスやプレッシャーを感じていました。

 日本のみなさんには、さまざまな暗黙のマナーはあまりに当たり前のものであって、問題に感じるどころか、普段意識すらしない方もおられるかもしれません。しかし私のような外国人にとっては、その細やかなマナー、作法に則った振る舞いは、日本人の優れた面だと映ることもあれば、逆に出かけることが面倒になるほどの強い圧力のように感じられることも、正直に言えばありました。