「社内の飲み会に、若手が来てくれない」
このような悩みを抱えている管理職は多い。昔あったような「上司・先輩に誘われたら断ってはいけない」という風潮は弱まり、若者らは単純に「行きたいか/行きたくないか」で判断するようになってきている。一方で、職場のコミュニケーションを円滑にしたり、部下・後輩の人柄をより深く理解したりするために、飲み会を企画したいと思っている人もいるだろう。
そこで今回は、新刊『ビジネス会食 完全攻略マニュアル』の著者で、大手広告代理店時代に最大28回/月の会食を経験した会食専門家・yuuu氏に、社内飲みを成功させるコツを伺った。(聞き手/『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者 安達裕哉氏、構成/ダイヤモンド社コンテンツビジネス部)
社内飲みで部下が一番嫌なのは「上司にお金を徴収されること」
――最近、「社内の飲み会に、若手が来てくれない」という悩みを抱えている管理職が結構いるみたいです。会食専門家のyuuuさん的に、社内飲みを上手にアレンジするコツはありますか?
yuuu 上司の立場で「社内飲み」を成功させるのは、クライアントとの会食と同じくらい難しいと僕は思っています。まず大前提として、「職場の飲み会が好きな人ばかりではない」という認識は、絶対に持っておくべきです。
昔は、「上司に飲みに誘われたら、部下は必ず従うべきだ」というような風潮がありました。また、日頃のコミュニケーションを円滑にするには「飲み会が大事だ」という考えの人が、今でも一定数いるのは事実です。
でも、今の若い世代は、上司とのコミュニケーションが大切であることは理解しつつも、家族と過ごす時間やSNSを楽しむ時間も非常に重要視しています。
なので、上司として社内飲みを開催するなら、そうした時間の過ごし方を上回るような「価値」を出せるように努力しないといけません。
――上司として気をつけるべきポイントは何でしょうか?
yuuu 社内飲みで若手が一番嫌がるのが、上司が言い出しっぺの飲み会で「お金を徴収される」ことです。何の気なしに若手にもお金を出させていると思いますが、これはかなりのマイナスポイントです。
なので、財布事情が多少苦しくても、なるべく上司が出した方がいいのは間違いありません。そういう意味で、上司の立場でいえば、美味しくて価格がリーズナブルなお店を選ぶのが得策ですね。
さらに、その場で仕事や人生に役立つ話ができれば、「有意義な時間を無料で過ごせた」と思ってもらえます。
社内飲みは「周りからどう見られるか」を常に意識すべき
――会食専門家であるyuuuさんは、職場の後輩を飲みに誘うことも多いんですか?
yuuu 僕の場合、積極的に誘うことはあまりありません。ですが、見るからに後輩が仕事で悩んでいる様子なら、「もしよければ話聞こうか?」と声をかけるようにしています。
このとき、部下との飲みが「社内的に『えこひいきをしている』と受け取られないか」という視点を持っておくことが重要です。なぜなら、誘いやすい特定の部下ばかりを飲みに連れていくと、その部下が周りから「上司に媚びを売っている人だ」と見られかねないからです。
そう思われないためには、結果的に参加者がいつも同じだったとしても、声がけは全員にしておくことが大事です。そうすれば、「一部の人だけが優遇されている」という誤解を防ぐことができます。
また、男性の上司が女性の後輩を「サシ」で誘うのは絶対に避けるべきです。基本的に仕事の話は会議室で済ませ、かりに女性の方から誘われたとしても、必ず他の男性部下も交えて会をアレンジしましょう。
男女2人きりで飲みに行っていると、裏で何を言われるかわからないですからね。
――なるほど。周囲へのケアがかなり大事なんですね。
yuuu まさにその通りで、社内飲みは、実は周りから様々な見られ方をするという意識を持っておくべきです。そのケアがきちんとできる上司だと、部下も参加しやすくなりますし、逆に部下から誘ってもらえるようになるかもしれないですね。
ちなみに、本書の特典「珠玉の会食店・困ったときのハズさない店リスト」では、社内飲みに使える「美味しくてコスパのいい店」も多数ご紹介しています。
会食専門家でありグルメが趣味でもある私が選りすぐった名店を紹介していますので、ぜひリストを活用してほしいですね。
(本稿は、『ビジネス会食 完全攻略マニュアル』の著者で、会食専門家のyuuu氏へのインタビューをもとに構成しました)
会食専門家・幹事研修講師
京都大学大学院修了後、新卒で大手広告代理店に入社。百戦錬磨の会食猛者達に揉まれ、最大28回/月の会食を経験。その苦戦苦闘の末に、すべての会食・食事会を誰もが成功に導くことができる、徹底的に実務に即した体系的な会食ノウハウ=「会食メソッド」を独自に生み出す。
現在は、自らセッティングした会食をきっかけに、念願のスタートアップ企業に就職。転職後も会食を通じて信頼関係を構築した企業から仕事を受けるなど、会食で人生の起点を創り出した。
『ビジネス会食 完全攻略マニュアル』が初の著書。本書特典の「珠玉の会食店/困ったときのハズさない店リスト」は、8年もの期間、ほぼ365日名店巡りを続けてきた記録の集大成。