変化が激しく先行き不透明の時代には、私たち一人ひとりの働き方にもバージョンアップが求められる。必要なのは、答えのない時代に素早く成果を出す仕事のやり方。それがアジャイル仕事術である。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社)は、経営共創基盤グループ会長 冨山和彦氏、『地頭力を鍛える』著者 細谷 功氏の2人がW推薦する注目の書。著者は、経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)でIGPIシンガポール取締役CEOを務める坂田幸樹氏。業界という壁がこわれ、ルーチン業務が減り、プロジェクト単位の仕事が圧倒的に増えていくこれからの時代。組織に依存するのではなく、私たち一人ひとりが自立(自律)した真のプロフェッショナルになることが求められる。本連載の特別編として書下ろしの記事をお届けする。

「年齢や性別」を判断基準にしている「昭和上司」が払っている代償とは?Photo: Adobe Stock

年齢や性別による偏見がもたらす影響

 皆さんの職場には、「あの人はまだ若いからこのポジションには早いのではないか」「この職種には男性(女性)の方が向いているのではないか」と、年齢や性別を判断基準にしている昭和上司はいないでしょうか?

 あるいは、国籍で「判断が遅い」「思ったことを言わない」などと乱暴な整理をする人もいるのではないでしょうか?

 残念ながら、現代の職場においても、年齢や性別、国籍や文化的背景を基にした偏見による判断が未だに行われていることがあります。こうした不当な評価は、職場の多様性と包摂性を損うだけでなく、従業員の可能性を狭め、組織全体の活力を削いでしまいます。結果的に、職場の士気が低下し、優秀な人材が流出する事態を招くことにもなります。

イノベーションを阻む固定観念

 さらに、こうした偏った固定観念は、組織のイノベーションを大きく妨げます。なぜなら、イノベーションを生み出す鍵は「よそ者」「若者」「馬鹿者」にあるからです。

 イノベーションを起こすには、さまざまな視点や大胆な発想が求められます。しかし、偏見にとらわれた昭和上司は、多様なアイデアを取り入れることに二の足を踏み、結果として組織は新しいアイデアを生み出す機会や能力そのものを失ってしまいます。このような状態では、競争力を維持することが難しくなり、企業全体の衰退を招くリスクが高まります。

イノベーションを生むアーキテクト思考

 イノベーションを生むためには、まずゼロベースで白紙に絵を描く「アーキテクト思考」が必要です。この思考は、既存の枠組みにとらわれず、新しい構想を描くための土台となります。

 特に「よそ者」「若者」「馬鹿者」との対話は、アーキテクト思考を磨く絶好の機会です。なぜなら、これらの人々は異なる視点や新鮮なアイデアを持ち込み、固定観念にとらわれない発想を提供してくれるからです。多様な意見に耳を傾けることで、自分の先入観というバイアスを取り除き、より独創的で強力な構想力を培うことができます。

 アジャイル仕事術では、アーキテクト思考をはじめとする構想力を磨くための具体的な方法を多数紹介しています。

坂田幸樹(さかた・こうき)
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)、IGPIシンガポール取締役CEO
早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト&ヤングに入社。その後、日本コカ・コーラ、リヴァンプなどを経て、経営共創基盤(IGPI)に入社。現在はシンガポールを拠点として日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。細谷功氏との共著書に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(ダイヤモンド社)がある。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社)が初の単著。