ビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

数あるコミュニケーションテクニックのなかで意外と見落としやすいのが、声と話し方だ。ビジネスパーソンにとって「いい声」で話すことは、大切なビジネススキルであり、ときにはそれが年収アップにも繋がるという。ビジネスのチャンスを広げる「声」の重要性を、ボイストレーナーが解説する。本稿は、秋竹朋子『年収の9割は声で決まる!なぜ、「一流の人」は、みんな「いい声」をしているのか?』(清談社Publico)の一部を抜粋・編集したものです。

「声トレ」を始める
きっかけとなった出会い

 まず私自身の「出会い」の話をしておこうと思います。

 幼いころから音楽を学び、音楽専門の高校、音楽大学、大学院と、まさに私の青春時代は音楽一色。そうして身につけた技術や知識をもとに、19歳のころからは子どもたちに歌やピアノの指導もしていました。

 そんな私が、一見、音楽とはかけ離れたビジネスパーソン向けのボイスレッスンに取り組むようになったのは、ひとりの男性との出会いがきっかけでした。

 いまから、もう15年近く前のことでしょうか。あるビジネスの勉強会で知り合った男性経営者が、私に悩みを打ち明けてきました。

「僕は仕事で講演をすることが多いのだけど、しばらく話していると決まって喉がかれてしまうんだ。もともと声が通りにくいから、無理をしているのかもしれない。滑舌は悪いし、すぐ早口にもなってしまう。もっと説得力のある話し方にしたいからボイストレーニングにも通っているのに、なかなか成果が出なくてね」

 そのときの私は、まだ「話す声」に特化した活動はしていませんでした。彼も具体的な助言を求めるというよりは、私が音楽の専門家で、とくに声楽を長く学んできたことを知って、世間話のような軽い気持ちで打ち明けたのだと思います。

 実際のところ、彼の声はお世辞にもほめられたものではありませんでした。「トレーニングに通っているというのに、どんなことを教わっているんだろう」と、不思議に思ったぐらいです。

 そこで私も軽い気持ちで、「あなたの声の出し方には、こんな欠点がある。喉の使い方などを変えてみたら、もっといい声が出せるようになりますよ」と簡単な指導をしました。

 すると、みるみるうちに彼の声がよくなっていき、十数分後にはさっきまでとは段違いの、よく通る印象のいい声になりました。

声楽家としての発声のノウハウと
絶対音感がある聴力が決め手に

 お金と時間をかけてスクールに通っても、まったく直せなかった彼はびっくりです。

「やっぱり、音楽家の耳ってすごいんだね!教え方もとてもわかりやすかった。これだけ教えるのが上手なんだから、ボイストレーニングのスクールを開いてみれば?」

 実は、私がボイスレッスンの仕事を始めるようになったのは、これがきっかけなんです。