しかし、トラブルや進捗の遅れなど、プロジェクトの状況が悪くなると、ビジョンの再周知やモチベーション回復などのリーダーシップが必要となります。

 このように、リーダーはチームの状況に応じてリーダーシップとマネジメントを使い分けなければいけません。どちらか一方だけでは、リーダーの仕事は務まらないのです。

 ただし、リーダーシップとマネジメントは、人によって得意、不得意がわかれます。例えば私の場合は、リーダーシップを取ることは得意ですが、マネジメントはやや苦手です。

 自分がどちらを不得意としているのかを理解しておかないと、チームがどんな状況でも得意なスキルばかりを使いたがる、という偏った状態が生まれます。

 また、苦手な分野は、普段から意識してスキルアップをしておかなければいけません。そのスキルが必要なタイミングが来たときに、即座に実践できるようにするためです。そうしないと、バランスの取れたリーダーの仕事はできません。

図表1:チームの状況で「リーダーシップ」と「マネジメント」を使い分ける同書より転載
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リーダーシップ論を応用して
自らのスタイルを編み出す

 世の中は、たくさんのリーダーシップ論で溢れています。

 クルト・レヴィンの「3つのリーダーシップ・スタイル」のほか、「コンセプト理論」「PM理論」など、有名なものだけでもいくつもの理論がありますが、ここで重要なのは、自分なりのスタイルを見つけることです。

 ここでは、私がおすすめする、リーダーシップ・スタイルを紹介することにします。

 アメリカの心理学者、ダニエル・ゴールドマンは、EQ(EmotionalIntelligence:心の知能指数)の構成要素をもとに、リーダーシップには、次の6つのスタイルがあると定義しました。

(1)ビジョン型リーダーシップ(Visionary Leadership)
(2)コーチ型リーダーシップ(Coaching Leadership)
(3)関係重視型リーダーシップ(Affiliative Leadership)
(4)民主型リーダーシップ(Democratic Leadership)
(5)ペースセッター型リーダーシップ(Pacesetting Leadership)
(6)強制型リーダーシップ(Commanding Leadership)

 それぞれの簡単な説明は下図の通りです。自分はどのタイプだろうか、どれが使いやすいか、どれが苦手か、考えてみてください。

 今の段階では、何となくイメージできれば十分です。これらの理論をどんなに深く理解しても、実際の運用場面ではどれか一つのスタイルに決めることは難しいでしょう。ケース・バイ・ケースでいくつかのスタイルをミックスしながら使うことになるはずです。

図表2:ダニエル・ゴールドマンのリーダーシップ6つのスタイル同書より転載
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