周りの議論についていけない…
教授に泣きつく
――ハーバードの授業や、アメリカでの生活はどうでしたか。
入学当初は、英語で本当に苦労しました。ハーバードは少人数でディスカッションする授業が多いのですが、まず周りの学生たちが何を言ってるのか全く分からない(笑)。自分の意見を言うどころではなかったですね。しかし少人数の授業では、出席しても発言しなければ「出席点」は0点。欠席扱いになってしまいます。
教授に相談に行くと「授業の最初に手を挙げなさい。そしたら当ててあげる」と言われました。教授の質問は分かりやすい英語で何とか理解できたので、学生たちの議論中に入るより発言がしやすいというわけです。そこから少しずつ、恥をかきながら慣れていきました。特別な上達法なんてありません。分からないことはとにかく聞く。「打席に立つ」ことが大事だと学びました。
海外に出てよかったと思うことは、自分がマイノリティーになる経験ができたことです。それまで私は恵まれた環境で育ち、何でも「自分でやろう、やれる!」と思って生きてきました。周りからは頼られることが多く、誤解を恐れずに言うと「できる側」でした。そんな私が「できない」という立場になったのです。
例えば、病気になってもどんな痛みなのか医師に伝えられない。初めて自分の弱さを知り、人に助けを求められるようになりました。周りに助けてもらう経験をしたことで、助けを必要としている人のことが想像できるようになったのも大きな収穫です。この経験は今の市長の仕事にも生きていると感じます。