自分の理解度を俯瞰してみよう
メタ認知が能力向上に有効な理由

 なるほど、【目的設定】や【プレビュー】が大切だというのはなんとなくわかった。でも、本当に効果的なインプットにつながるのだろうか?科学的エビデンスはあるのか?

 こうした視点は非常に重要です。なぜなら、昔から慣れ親しまれているような勉強法やインプット習慣でも、科学的に吟味してみると意外と効果がなかったり、逆に悪影響であったりすることがしばしばあるからです。

 しかし、ご安心ください。【目的設定】も【プレビュー】もしっかりとした科学的根拠に基づいています。

 キーワードは、「メタ認知」。近年、教育をはじめとするさまざまな分野で注目されているコンセプトです。少し詳しく解説していきます。

「認知」というのは、物事を見たり聞いたり、知っていたりすること。「メタ認知」というのは、物事に関する認知の一段上(「メタ」)のレベルの認知、つまり「認知の認知」です。

 例えば、私は今スタンフォードにいますが、東京の天気がどうなっているのかを知りません。これは、私の東京の天気に関する認知です。さらに私は、自分が「東京の天気を知らない」ということも知っています。

 これは、「知らない」という「認知」に関する「知っている」という認知なので、まさに「認知に関する認知」、メタ認知の一種と言えます。

 この他にも、自分の得意・不得意の認識や、自己評価とそれに基づく目標設定なども、自分の知識や能力に関する認識に含まれるので、メタ認知に分類されます。

 そんなメタ認知ですが、なぜ近年話題になっているのか。

 それはズバリ、メタ認知能力を上げることで、理解力や応用力がアップするなど、インプットを効果的にできることが明らかになってきたからです(1*)。

「仕事のできない人」が資料の1ページ目から丁寧に読み始めるワケ『脳が一生忘れないインプット術』(星友啓、あさ出版)

 インプットの効果はさまざまな要因に左右されますが、才能や知性の関与の割合が10%なのに対し、メタ認知能力が関与する割合は17%という報告もされています(2*)。

 つまり、才能や能力を高めるよりも、メタ認知をアップしたほうがおよそ2倍、インプットがお得だということになります。

(1*)…Muijs D.,Bokhove C.(2020).“Metacognition and Self-Regulation:Evidence Review.”Education Endowment Foundation.

(2*)…Veenman M.V.J.,Van Hout-Wolters B.H.A.M.,Afflerbach P.(2006).“Metacognition and learning: conceptual and methodolog-ical considerations.”Metacognition and Learning,1:3-14.