橋下 就活生にとっての履歴書、アーティストにとってのポートフォリオみたいなものです。「自分を採用してください!」と手を挙げる学生が、「これもできます」「あれもできます」とアピールしても、「本当にできんの?」と疑われるのは当然です。そこで実際に経験してきた具体的なエピソードや、失敗から学んだ気づきなどがあれば、採用者は相手が口先だけではないことを理解できます。アーティストも自分でつくり上げた作品をそこに提示すれば、説得力は増すでしょう。彼ら彼女らにそのような経験があるならば、「仕事を任せてみようか」ともなるはずです。

口先コメンテーターではなく
当事者として動けるか

橋下 このような履歴書、ポートフォリオに値するものが、野党にとっては地方の政治行政における実績です。実際に地方の選挙で勝利して、首長を獲り多数派の与党になって政策を実行し、地域を変えた事例を積み増していけば、いざ国政で「政権交代」の風が吹き始めてきたときに、「自分たちはこの地域で、○○のような政策を実現しました。その結果、この地域はこうなりました」と実例を見せることができる。これが国政を任せてもらうために重要なんです。

 野党こそ、口先コメンテーターから脱却しなくてはなりません。自らに実行力があることを、有権者に示さなくてはならないのです。

――その意味では、作家の百田尚樹さんが政治団体「日本保守党」を設立して代表になられたのは、いいことなんでしょうね。れいわ新選組代表の山本太郎さんも2020年に東京都知事選に出馬されました。維新の成功例、橋下さんが挑戦されてきたことを意識されているのでは、と感じます。もちろん政治的立場や主義主張はまったく異なりますが。

【橋下徹が大胆提言!】維新が自民攻撃で「ブーメラン」を食らわないための3つの処方箋『政権変容論』(橋下 徹、講談社)

橋下 そうですね。彼らは僕が実際にやってきたことに散々文句を言ってきたり、僕の経験を基にした政治的主張に罵詈雑言を浴びせてきたりしますが、彼らも一度実際の政治行政を担ってみれば、自分たちの主張がいかに現実離れしているかが分かるでしょう。

 百田氏の威勢のいい主張は、コメンテーターや作家、野党政治家や政府に入らない与党政治家なら言えることですが、政府に入って行政権の責任を担いながら実現できるものはほぼゼロです。それを知れば彼らの主張も現実的なものになるでしょう。まあ彼らが政府に入るなんてことは、僕が生きている間にはまずないでしょうが(笑)。