すかいらーくのブランドポートフォリオすかいらーくグループのブランドポートフォリオ。この中に入る資さんは、幅広い客層へのアプローチが可能だろう(すかいらーく23年統合報告書) 拡大画像表示

飲食チェーンの競争は
「最強対決」から「カードバトル化」へ

 競争が激しい外食業界。すかいらーくHDとって資さんうどんの買収は、ライバルに差を付ける切り札となり得るだろう。一例として、ゼンショーと比較してみよう。

 すかいらーくHDは、バーミヤンやジョナサンなど約20のブランドを展開する。ゼンショーも、すき家やココス、はま寿司などほぼ同数のブランドをそろえている。近年の飲食チェーンでは、取得した物件に最適なブランドを充て、すぐ別業態に切り替える戦略が執られている。対決の構図が、強者同士の「直接対決型」から、地域の客層やトレンドを読み合ってケース・バイ・ケースで手札を変える「カードバトル型」に変わりつつある、といえるだろう。

 具体的にすかいらーくHDは近年、主力ブランド「ガスト」を中心に、コンセプトや客層が異なる「しゃぶ葉」「むさしの森珈琲」などへ転換している。24年1~3月は27店舗の業態転換を実施し、プラス38.6%の売上効果があったという。例えば青森・八戸ではガストブランドを間引き(2店のうち1店をしゃぶ葉に転換)することで、カニバリゼーション解消による収益改善につなげた。

 こうしたブランド転換(カードのチェンジ)が成長のカギを握っていることは間違いない。先に述べた通り、資さんうどんは、うどんだけでなく手軽な和食を食べたい人まで幅広い客層の取り込みが可能だろう。かつ、定番商品に根強いファンがいることから、他うどんチェーンとの差別化も可能だ。

 すかいらーくHDの業績(23年12月期)は、売上高3548億円、営業利益116億円、当期利益47億円。今般の買収金額240億円は、すかいらーくHDにとって強い意気込みを示す額と考えていいだろう。一方で、資さんうどんの“万能カード”ぶりを考えれば、バリューに見合った投資ともいえる。

 ただし、新しい地域での出店バトルにおいて、九州や関西で発揮された強みがそのまま受け入れられるかは、注意が必要だ。そして何より、創業の精神を守り従来ファンを呼び寄せられるかが、今後を左右しそうである。