「静かで控えめ」は賢者の戦略──。そう説くのは、台湾出身、超内向型でありながら超外向型社会アメリカで成功を収めたジル・チャンだ。同氏による世界的ベストセラー『「静かな人」の戦略書──騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法』(ジル・チャン著、神崎朗子訳)は、聞く力、気配り、謙虚、冷静、観察眼など、内向的な人が持つ特有の能力の秘密を解き明かしている。騒がしい世の中で静かな人がその潜在能力を最大限に発揮する方法とは? 同書の著者に秘訣を教えてもらった。(構成/ダイヤモンド社・菱沼美咲)
Q. 優柔不断で困っています
自分はとても優柔不断です。「買う服の色を決める」だけでもだれかに相談したくなります。どうしても「自分の選択を他人がどう思うか」が気になり、「自分で選択することに対する恐怖感」があります。ジルさんが選択する際に意識していることはありますか。
「両取り」できる選択肢はないか?
ジル・チャン氏(以下、チャン氏) 最初にお伝えしておきたいのは、「自分が行った選択に対して責任をとるのは自分自身」だということです。友人はだれも責任をとってはくれません。それは覚えておいてくださいね。
私の友人に、あなたと同じような傾向をもつ友だちがいます。彼女は、レストランでメニューを10分くらいにらんでも、注文を決められなかったりします。
そんなとき私は、「食べたいものを2つ選んでみて」と伝えます。そして、選んでもらったうち、ひとつを彼女が頼み、もうひとつを私が頼んでシェアをします。この方法はとてもうまくいくように感じています。
この例のように、いつもひとつの選択肢を選ばなければならないと思っていても、それ以外に解決策があることがあります。なにか別の手段を使うと解決するかもしれないし、選択しなくてもいいのかもしれないということです。
「最悪のシナリオ」を考えてみる
チャン氏 買いたい服の色で悩んでいる場合、一度両方買ってみて、3か月間、自分がどっちの色の服を多く着ているのか、観察してみるとよいと思います。「自分は青と緑の両方が好きだと思っていたけれど、実際には青より緑のほうが多く着るんだな」など、両方選ぶことで、初めて得られる気づきがあります。
もうひとつの方法としては、最悪のシナリオを考えることをおすすめします。仮に間違った選択をしてしまったとして、どんな状況に陥るのかを考えるのです。
たとえば青ではなく緑の服を買ったとき、どんなことが想定されるでしょう。最悪の結果としては、やっぱり青がよかったと思って後悔するかもしれません。でもそれなら、次は青を買えばいいだけです。つまり、たいして困る話ではないので、どっちを買ってもいいわけです。
なにかを選択するとき、犠牲が伴うということは事実です。でも、最悪のシナリオを具体的に考えてみると、じつはたいしたことじゃないこと、リカバリー可能なことがほとんどです。
優柔不断のせいで「信頼」を失うかもしれない
チャン氏 また、かつて私が友人に言われたことを紹介します。
以前、新しい仕事のオファーがあり、いまの仕事を辞めて新しい仕事に就くべきかとても迷っていた時期がありました。
そんなときある友人が、「なかなか決められないということは、どちらの選択肢もいいということだよ」と教えてくれたんです。「つまり、どちらの決断をしても、失うものはそんなに多くないはず」だと。
むしろ、優柔不断でいつまでも決められないことのほうが問題です。
しつこく選択を引き延ばしていると、チャンスを逃してしまうかもしれません。いったい何を考えているのかと、相手に不信感を抱かせてしまうことも考えられます。むやみに決断を引き延ばすことで、人からの「信頼」を失ってしまうかもしれないのです。
迷うということは、どちらを選んでもいいということ──。
優柔不断だと感じて悩んでいるあなたに、この言葉を贈りたいと思います。
※本記事は、『「静かな人」の戦略書』の著者に話をうかがったものです。