体外受精の具体的な方法

 次に、体外受精のやり方を順番に説明しましょう。

1. ホルモン剤を投与
 月経2~3日目診察や採血結果によって、排卵誘発剤の種類を決定します。
 その後、注射もしくは内服(クロミフェンなど)によって卵胞を大きくします。

2. 卵子を取り出す
 卵胞が16mm~20mmまで成長したところで、卵子の成熟を促す薬を使用します。
 約1日半後に、排卵直前の卵胞を、超音波ガイド下で腟を通じて穿刺吸引(せんしきゅういん)します。細くて長い針で卵巣を刺して、卵胞内容を吸い取るのです。成長した卵胞数によって鎮痛剤のみの使用か、静脈麻酔下で排卵を行ないます。
 ホルモン剤を使わないと発育卵胞はだいたい1個ですが、ホルモン剤で刺激すると、多数の卵胞ができることが多く、多い人だと20個くらいできることもあります。

3. 精子と卵子を合わせて受精卵をつくる
 同じ日に男性から精子をとり、卵子と精子を合わせて受精させます。
 受精のさせ方は2つあります。
 1つは、シャーレの中に卵子と精子を入れ、自然に受精させる方法です。もう1つは、顕微授精という方法です。精子の状態が悪い、あるいは受精障害の場合は、人工的に精子を卵子の中に注入します。
 次の日までに受精したかどうかわかります。受精すると受精卵ができます。

4. 受精卵を子宮に戻す
 受精卵を子宮に戻すプロセスは2つあります。採卵した後、2日~5日程度培養した受精卵を戻す方法と、凍結させて時間をおいて戻す方法です。
 日本は凍結技術が特にすぐれており、受精卵をいったん液体窒素で凍結することが多いです。そして次の生理の周期からホルモン剤を使わずに自然の排卵を起こした後、あるいはホルモン剤を使用して、受精卵の着床しやすいホルモン状態と子宮内環境となった時期に受精卵を融解して戻します。
 他の国ではかつて、凍結や保存に設備とコストがかかることから、採卵の数日後に受精卵を子宮に戻すことも多かったのですが、現在では凍結保存が一般的です。ただし、宗教的な理由で凍結しない人もいます。たとえばイタリアの厳格なカトリック教徒の方は、カトリックの教義に従い受精卵は「人間」と考えるので、凍らせることを拒否する人もいます。
液体窒素で凍結する方法のほうが、成功率が最大10%上がります。その理由は、女性のホルモンバランスの状況に関係します。採卵直後は、卵巣が腫れて大きくなっていることもありますし、採卵としては適したホルモン状態ではあっても、受精卵を戻すのには適していないこともあります。そのため凍結して、ホルモンバランスの回復を待ってから受精卵を戻すことで成功率を上げるのです。