「忍者といえば手裏剣」
というのは大間違い?

 忍者(以降、本稿ではこの呼称で統一する)はその後、地域や時代に合わせて多様な進化を遂げながら、日本史の随所で暗躍することになる。ある時はスパイとして、またある時は傭兵として、ニーズに応じて召し抱えられて仕事をこなした。

 なお、たいていの忍者には本業があり、普段は農民や商人、あるいは薬売りとして暮らしながら、要請に応じて出動するパートタイマー的な働き方をしていたという。鎖鎌やクナイなど、忍者が使っていたとされる道具に農具から派生した物が多いのも、普段は農民として生計を立てていたからだ。

 また、忍者といえばどうしても、手裏剣を投げる姿をイメージしがちだが、実は現在までに確認されている資料の中に、手裏剣の存在を匂わせる記述はほとんどない。

 スパイとしての隠密活動がメインだったとすればそれでも当然で、大量の手裏剣を携帯するのは重量面で不都合があるし、そもそも当時の製鉄技術からすれば、投げて使い捨てるには手裏剣はあまりにも高価だ。

 忍者が武器を用いるシーンがあるとすれば、逃走時や撹乱のためだったはず。鉄砲伝来(1543年)以降には射撃に長けた一族も登場しているが、手裏剣を投げて攻撃することはまずあり得ない。

 ただ、手裏剣自体が架空のものというわけではない。手裏剣とはもともと、弓や槍などと同じように武士が修練する武術のひとつで、そのルーツは仏教の法具にあるというのが通説だ。

 それが進化して応用の幅を広げ、必要に応じて穴を掘るのに用いたり、石垣を登る際の取っ掛かりに使ったり、場面に応じて様々な使われ方をしていたようだ。

 ではなぜ、忍者=手裏剣のイメージが定着したのかというと、これはどうやら江戸時代に描かれた浮世絵に起因するらしい。手裏剣を携える忍者の姿が創作的に表現され、それが流布したことで「誤解」が浸透したわけだ。

「忍者の手裏剣」実は投げる武器ではなく…本当の使い方が衝撃的すぎた!伊賀に行った時に撮影した手裏剣(レプリカ)の数々 Photo by S.T.